戦国大名論−暴力と法と権力

実は副題に誘われて購入したのだが,非常に面白かった。歴史家である著者が,戦国大名の形成について論じているのだが,僕がイメージしているような「歴史学」とはちょっと違っていて,まさに「政治学」の文献と言ってよいのではないかと。著者によれば,戦…

民主主義の本質と価値

日本政治学会で報告と討論。どちらもなんというかきっちりとした専門のところではなく,「門前の小僧習わぬ経を読む」感が強かったように思うが,なんとか最低限のお役目は果たせたということで。で,討論者としてのお仕事のために読んだのが,ケルゼン『民…

現代日本における都市メカニズム

大阪大学の人間科学研究科での博士論文をもとにした著書。非常に筋がクリアなので某学会に向かう電車やスキマ時間(!?)などで一気に読めてとても勉強になった。主張は極めて明確で、日本でも繰り返し語られてきた「都市=つながりの失われた場所」という…

投資社会の勃興

オビや冒頭を読んで、自分の研究にもいろいろ示唆があるんじゃないかと思って読んでみた。非常に面白かったし勉強になったと思う。ただもうちょっと公債のしくみとか具体的な説明があった方が読みやすかったような気がしたが(とはいえ今でも十分長いので、…

建築と権力のダイナミズム

分担執筆しました『建築と権力のダイナミズム』(御厨貴・井上章一編、岩波書店)が出版されました。私は「庁舎と政治−都市の中心をめぐる競合と協調」(第5章)を担当しています。政治と建築というテーマは、日本ではそれこそ御厨先生が意識的に分析をはじ…

デモクラシーと民族問題

立教大学の中井先生のご著書。博士論文をもとにしたものということですが、これはすごいですね。先行研究を整理したうえでの理論的展開、数理的分析、計量分析を行って、さらにラトヴィア・エストニアという非英語圏(ロシア語+現地語?)を対象とした事例…

ローカルからの再出発

宣伝ですが、東京大学社会科学研究所の全所的研究プロジェクト、「ガバナンスを問い直す」のローカル・ガバナンス班の研究成果として『ローカルからの再出発−日本と福井のガバナンス』(有斐閣)が出版されました。私も「大都市をめぐる2つのガバナンス─大…

今年の◯冊(2014年)

恒例でやっております今年の○冊の季節になりました。2010年からやってるので5回目になりますね。年々しんどくなってく気がしますが、このコーナーだけは読んでくださる方がどうもいるようなので、気力の限りは続けていきたいと思っております。とはいえ、在…

『失われた民主主義』

ちょっと仕事の関係でシーダ・スコッチポル『失われた民主主義−メンバーシップからマネジメントへ』を読んでいたのだが、今回の選挙を意識しながら読むとなかなか趣深い本であるように思われる。本書は、アメリカの建国以来地域的なボランティア団体/結社が…

『市民を雇わない国家』

東京大学の前田健太郎先生の博士論文。非常に勉強になった。基本的には日本を中心とした丁寧な事例研究を通じて、公務員の数がどのように決まっているのかという問題を議論するもの。最後のところでは、計量分析の成功研究についての再現を使った分析をして…

『政党内閣制の展開と崩壊 1927〜36年』

以前紹介した村井良太先生の本のいわば「続編」。あとがきを読むと、もともと一本の博士論文として構想・執筆されていたものであったのに、大幅に加筆修正して二本目を送り出されたとのこと。サントリー学芸賞をとった一作目も面白いが、最近政党に対して個…

今年の○冊(2013年)

2010年から毎年年末にこのネタを書いてきてますが、2013年版今年の○冊を。2010年にこれを始めたのは、当時なぜか現代日本政治関係の博士論文が続々と出版されていて、それを紹介しようと思ったからです。最近減ったかな、と思ったのですが、やはり今年につい…

ルポ 虐待

発覚した時から気になっていた事件でもあり、一気に読んでしまった。一応幼い子持ちの父親としてはかなりしんどいところがあり、読後感は相当苦い。事件が報道されている時から被告となった母親−判決が確定しているから受刑者というべきか−を社会的に責める…

消費税 政と官との「十年戦争」

日本経済新聞社の清水真人氏から『消費税』を頂きました。どうもありがとうございます。いや、著者とは面識ないんですが、なぜか今回ご出版にあたって書評を新潮社のPR誌に書いて欲しい、というご依頼を受けまして。普通は断りそうなもんなのですが、一応熱…

マンション管理

お盆の週は東京の妻実家に帰省(寄生!?)中。帰省のために夜中に飲み歩くこともなく、昼間は子どもを連れて出歩いてるのでまあそれなりに健康的な生活ではあるのだけども、子どもと一緒に夕食のあとすぐに寝てしまうことが多くなるのでこれは体に悪いような…

経済書・政治書ベスト30

東洋経済の毎年恒例となってきた企画です(ベストいくつ、というのは揺れがあるような気がするけど)。今年は私も東洋経済に連載を書かせていただいていることもあり、あわせて6冊ほど推薦させて頂きました。…しかし、コメントを採用して頂いた細谷先生の『…

謎の独立国家ソマリランド

これはもう脱帽ですね、まじめに感動しました。たぶん今年かここ数年のベストです。 話は非常に単純で、「未知」が大好きな著者が、アフリカの角にあるソマリアに行く話です。ソマリアは長年の内戦で政府がほとんど機能せず「経済学の実験」と呼ばれたりする…

少子化論

最近ブログがいただきもの記録にしかなってないので月に二回くらいは書きたいと思いつつ6月は失敗。先月のいただきものは重くて整理できていないので、とりあえずちょっと前に読んだこの『少子化論』を紹介したい。 少子化関係の書籍は多いが、研究書として…

パラグラフ・ライティング(特に市大生向け)

文書の書き方本のようなものを個人的に勧めることはほとんどやったことがないのだが、この本『論理が伝わる世界標準の「書く技術」−「パラグラフ・ライティング」入門』(講談社ブルーバックス)は、学生のみなさんにぜひ読んで頂きたい。例年のゼミ、それか…

Boundary Control

本書は、副題がSubnational Authoritarianism in Federal Democraciesとなっていて、まさにテーマはこの通り。主題であるBoundary Controlは、要するに地方で独占的な権力を持つ政府が、いかにして自分たちと他の政府(基本的に中央政府)との境界線をコント…

『旧体制と大革命』あるいは古典を読むこと

昨年末の某研究会で、松井望先生に拙著を書評して頂く機会があり、「大阪の中に大阪を越えるものを見た」「大阪維新という「革命」以前から続く論理構造の抽出」というトクヴィルを踏まえたご感想を頂きまして*1、まあもちろん今回の大阪の話がそんな世界史…

今年の○冊(2012年)

三回目になりますが、年末ということで今年の◯冊を。ええと念のためですが、あくまでも基本的には出版された博士論文をご紹介するのが趣旨なので、脱線して紹介する非−博士論文は別として、必ずしも一般に読みやすいオススメ本とはちょっと違うことをご承知…

国際秩序

拙著と同じタイミングで商業的なライバルとして刊行された中公新書。まあ気が小さいもので自分の本の売れ行きをたまにチェックしてしまうわけですが、著者の知名度からすれば当然のことですが本書の方がよく売れていて、やや専門が違うのですがどういう感じ…

野党議員から与党議員へ

ほとんど社会党の衰亡史ともなっている村山富市回顧録での、与党議員となった社会党議員に対する見方はなかなかおもしろい。ちょっと長いけど印象に残った部分を引用してみる。まるで昨日に至る民主党の話をしているようだ。 −−−ところで当時、社会党の委員…

最高裁回顧録

行政改革会議にも参画した行政法の権威である藤田宙靖先生が、最高裁の判事として勤務した7年半を振り返った回顧録。文章がうまいということもあって、読み物としても単純に面白い。しかし、それだけではなく、なかなかわかりにくい最高裁判事の仕事ぶりを…

地方政府の民主主義

このたび,初めての単著を出版させていただくことになりました。『地方政府の民主主義』という大仰なタイトルで,中身がタイトルについていっているのかは,読者の皆様のご高評にお任せしたいと思いますが,タイトルを思いついたときには,自分では20代のと…

戦後日本政党政治史論/専門性の政治学

力久昌幸先生,辻陽先生,辻由希先生,白崎護先生から『戦後日本政党政治史論』を頂きました。的場敏博先生のご遺著ということです。的場先生の門下の先生方でご遺稿を発見されて,ご著書として出版されたそうです。「補論」を書かれた待鳥先生も含めて大変…

今年の◯冊(2011年)

昨年,一部でちょっと好評を頂いた(ような気がする)ので,今年もやってみようかと思います。去年に続いて今年も,出版不況と言われつつも博士論文をもとにした著書というのは出版が続いています。主にそういった単著を,そしてあるいは初の単著というよう…

最近のいただきもの

中京大学の京俊介先生から,『著作権法改正の政治学』を頂きました。博士論文をずっと読ませていただいておりましたが,もう出版ですから素晴らしいものです。法と政治の交錯する分野,司法についての政治学的な分析というのは,日本の政治学ではなかなか行…

『中国化する日本』

與那覇さんに頂いた本だが,これは非常に面白かった。部分部分については,専門家ではないので議論の実証的な妥当性については評価できないけれども*1,おもに「近世」から現代にかけての日本通史を,「中国化」「江戸時代化」というキーワードで整理し,現…