集落移転

時事通信で興味深い記事が配信されてた。

◎豪雪地帯の集団移転を支援=高齢化進む小集落、宅地買い取りに補助−国土交通省
国土交通省は2008年度、人口減少や高齢化が進む豪雪地帯の小規模集落を対象に、住民の合意に基づく集団移転を支援する事業を設ける方針を固めた。06年の豪雪で雪下ろし作業中の高齢者の事故死が相次いだことを踏まえた対策。おおむね5戸以上が近くの基幹集落へ移り住む場合、宅地の買い取り費などの半額を国が補助する。
同省によると、06年豪雪は日本海側を中心に死者152人の被害を出した。亡くなった人のうち3分の2は65歳以上で、雪処理中の事故死が全体の4分の3を占めた。同省は、過疎化や高齢化の進展で高齢者自らが雪処理に従事せざるを得なかったことに加え、地域でボランティアらの受け入れ態勢が十分でなかったことが背景にあるとみている。
8月23日官庁速報

いわゆるコンパクト・シティ構想の一環というよりも,維持するのが困難な限界集落からの集落移転に対して国が補助する,ということだろう。ただし移転先はそれこそ「コンパクト・シティ」とは限らずに「近くの基幹集落」となっていることを考えると,まさに漸次的な撤退の一環ということになる可能性もあると考えられる。補助採択事業としては,おおむね5戸以上の集落で,全世帯がまとまって基幹集落へ移転する場合となっていて(市町村が公営住宅の空き部屋や地域の空き家を積極的に斡旋する),国は元の宅地や農地の買い取り費を出すほか,転居費や家屋の解体について市町村へ1/2補助する,と。
現在のようにとにかく(支出規模の)小さな政府を目指す以上,遅かれ早かれこのような5戸くらいの極めて小さな集落に対してはこういう集落移転をする必要があるとは考えていたものの,意外と早いのかな,というのが率直な印象(とはいえ,たびたび紹介する「廃村へのソフトランディング:市町村を超えた集落移転による過疎地域の再編」『自治研究』69(4)は1993年の論文なわけだが)。こういう話を聞くと,限界集落の状況の悪化は都市居住者の想像を超えて進んでいるということなのだろう。しかし,10世帯未満の集落としてもまだまだ多いらしく,この記事はこう結んでいる。

同省の調査によると、豪雪地帯で10世帯未満の集落は北海道、東北、北陸の3圏域で約1400カ所ある。このうち末端の集落は約250カ所あり、こうした集落が集団移転の支援対象になるとみている。

ただ敢えて筋論ぽいことを考えると,これが国の仕事とすべきかどうかは結構深刻な議論があるように思われる。ある地方自治体が,限界的な公共サービス供給の費用がえらく高くつくことから,その地域の総意として(税金を集めて)同じ自治体の圏域内へと集落移転を行うのはよくわかる気がする。それに対してこれを国が補助出すっていうのはどうなんだろ。集落移転の意思決定を歪めて,別に移転しなくてもいいような集落までさせてしまう可能性もあるんじゃないだろうか。まあギリギリまで移転しないよりも,早めに移転した方がいいという考え方もないわけではないでしょうが…。いずれにせよ,これやるならその分税源移譲して地方に任せた方がいいような気がするのは気のせいかなぁ?*1まあもう少し考えてみないとわからないけど。

*1:いやもちろん,こないだの三位一体みたいなノリで税源移譲するとこういう限界集落を持ってるような自治体には恩恵がない,っていう話になるのかもしれないですが。