第52回会合(2008/7/11)

今回は,以前に猪瀬委員が強硬に求めていた北海道局のヒアリングと,域外規制に関する委員懇談会。まず北海道局については,もう資料を見て下さい,という感じではありますが,基本的に不正について平謝り,というかたち。しかしその説明も途中で「読み上げはいい」ということで猪瀬委員に止められて意見交換へ。論点としては,なぜこの資料にあるように様々な不正防止策を講じているのに,(その不正を調査する役割を果たすべき)組織の幹部クラスがかかわるようなかたちで不正が起きてしまうのか,というところ。委員としては,結局のところ個人の倫理とは別に組織が抱える問題は何なのか,ということを交代に尋ねていくのですが,現北海道局長はその点についての評価は言えない,の一点張り。そして開発局廃止の主張についての意見を求められ,反論すると「反論する前に何か再提案はないのか」と言われる始末…。というか,「個人的に,といわれてもなかなか発言しにくい,別の場であれば,ざっくばらんに申し上げることができるかもしれないが…」という発言をしているのですが,本当にそうなのであれば非公開の場でも議論した方がいいような気がしますが。少なくとも今回のようにほとんど意味がある回答がなされないのであれば,委員会を開く意義は感じられないし,分権委の側としても今後に活かすための検討材料に全くならない。そんなに公開の場で話せないけども非公開で話せるのならば,非公開で聞いていく方がよっぽど建設的だと思うんですけどねぇ。まさか記者クラブから非加入者を締め出すマスコミが反対することもないだろうし。
もうひとつの論点は,西尾代理から提起されたものですが,今回の談合事件が農業土木の分野から発生したことに注目するもの。僕は知らなかったのですが,問題の発覚当初,国交大臣は国会答弁の中で「農水省の管轄する分野で起きた」という趣旨の発言をしたそうで。開発局は普通の整備局がやっている仕事に加えて農業土木関連も持っているわけですが,この部分については一応農水大臣の指揮監督となっているそうです。で,本来なら農水も入って再発防止を考えるべきなのに,国交省だけでやるのはどうか,ということ。国交省の答えとしては,農水省と連絡を取らないわけではないが,北海道総合開発計画のもとで国交省所管の土木事業と農水土木を一体的に行うために組織を一本化している…ということで。まあ個人的な意見ですが,常識的には人事が問題なんでしょうねぇ。人事に対する外からの介入がほとんどないので(閉じた世界の内/外はあるんでしょうけど),独立王国のようになってしまうし,上司の言うことに対して逆らうこともできなくなるのではないかと。せめて他のブロックと同等の出先機関にすれば,人事(特に幹部人事)がブロックをまたいで行われるわけで,多少は省を超えた相互監視にも期待できるのかもしれませんが。
続いて域外規制の話。委員しては,省庁に対するヒアリングの中で都道府県の連携ができないから出先機関が必要だといわれており,それを突き崩す論理が必要だろう,という感じ。しかしこの点については西尾代理から次のようにまとめられています。

  • 従来のヒアリングの中で,各省庁が言ったのは,連携が取れないということではなくて,市町村・都道府県という自治体は本来管轄権は域内だけで,域外に権限をもつということは考えられないのではないか,だからこそ都道府県をまたがるものは省庁の権限にしないといけないのではないか,という答弁をした
  • 市町村や都道府県に概括的に自治権として与えられている事務事業は,市町村の区域内に限られておおり,域外に権限行使する自治権はない
  • しかし議論すべきは自治体に対して概括的に与える自治権の問題ではなくて,国の法律で,ある権限を都道府県に義務付ける,一都道府県にあるものは都道府県が,複数にまたがるものは国の管轄,と義務付けている
    • このときは,国が域外のことについてもやれるよ,といえばできるはず,それをやればいいじゃないか,というだけのことで,明確な例として認めているのが地方税・通信販売・介護サービス事業者への立ち入り
    • 他の法律でも,それを解釈上できるのではないかというものもあるし,それなら解釈を明確にすればいまでもできる
    • しかし多くの法律は今のままでは無理だから,明確に法律で域外権限を認めて欲しい,ということで,それぞれの都道府県が権限を持っているわけだから,立ち入りに行きますよ,と他の都道府県に連絡して,一緒に行きますよという連携を取れたほうがより望ましい
    • 連携のしくみも法改正するときに措置したほうが望ましいということはいえる

そして,第48回会合のときからも予想されたように,やはりここは消費者行政の改革を梃子に進めるようです。今回の議論では立ち入り権限が中心になっていたことから,井伊委員が病院の例をもとに認可権限についてどう考えているかを問題提起したところ,西尾代理としては消費者行政についての提言で,都道府県に移譲すべきとしたのは,報告徴収,立入検査や指示・改善命令,営業停止処分等に限定していて,認可については国の権限である場合,営業許可の取消は国しかできないと考えているとのこと。つまり,営業許可を取り消すという権限は国しかできないと考えていて,都道府県は改善命令等は行うとしても営業停止という措置ではなくて営業を禁止しようというときは国に措置してもらうしかない,だから国に対して措置要求する権限を与えて欲しいという整理だそうです。で,この整理については小早川委員が,消費者問題の第一次勧告のときにそこには踏み込んでいないが,今国が持っている許認可権そのものに問題ないわけではなくて,本社があるところの都道府県に移すことはありうるというコメントを。ここのところは出先機関整理の議論と権限移譲の議論,それから場合によっては義務付け・枠付けの議論まで絡んできそうで,結構ややこしい話が展開されそうです。