いくつか用事もあったので,週末は関西の研究会へ。場所は立命館大学で,もちろん初めて行ったわけですが,京福電車に乗ってみたり,石庭で有名な龍安寺に行ってみたり(お恥ずかしながら初めてです)でちょっとした小旅行気分。しかしそれにしても京都は暑かった。
さて金曜日に行われた分権委は54回目。今回は知事会の麻生会長との意見交換と,二次勧告前の出先機関に関する中間とりまとめの審議。知事会として最も強調することは,特に道路・河川で国から権限移譲を受けるのはいいけど,いざ国交省と折衝を始めたら(この日の午前が一回目の折衝だったらしい),やはり財源や人の裏づけについて明言されないから困る,という話。それを受けた委員の側からも,国交省ではなく内閣/政府に見解を求めた方がよいのではないか,というコメントが。ちょっとおもしろかったのは,西尾代理が今後の補助負担事業の仕分けについて知事会の協力を仰ぎたいという話をする中で,麻生会長が,三位一体以降国は都道府県に補助を出さずに市町村や民間に直接補助事業を行う傾向が強まっているということを懸念するコメントが。これまでは都道府県を経由して配っていた補助金を市町村に直接出すということは,単純に都道府県が差配する権限が減るということもあるでしょうし,財政的に弱い市町村であれば(都道府県ではなく)国に従属的になって,分権を進めることを拒むことになる可能性もあるのかもしれません。結局,これから「廃止すべき補助負担事業」,「補助負担事業としては廃止するけど財源を地方に移すべきもの」などのカテゴリで仕分けをするということになりそうですが,このような補助負担事業の仕分けというのは分権に関するひとつの鬼門であると考えられますので,状況を見ながら慎重に進めることが重要なのだろうと思われます。
麻生会長との意見交換であと強調されていたのは,その後の中間とりまとめの審議の中でも議論される「総合的な出先機関」の話。いま各省ごとにある出先機関を整理してブロックごとの「総合的な出先機関」について検討される可能性が示されているのですが,この機関が強大になりすぎるべきではないという懸念が表明されます。まあ都道府県としては権限が集中した出先機関が自分の近くにくるとまさに目の上のたんこぶになるわけで,そこはあまり賛成ではないということでしょう。この手の「総合的な出先機関」をめぐる議論は戦前から繰り返されているわけで,最近微妙に走り始めている道州制の議論との関係にも気をつけながらやはり慎重に扱うべき課題でしょうが…ちなみに戦前からの議論についてはこちらの本を。
[研究][地方分権][本]広域行政
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まあ議論としてはこんなところですが,個人的には猪瀬委員と露木委員から,それぞれ道路・河川の移譲と北海道開発局の問題をめぐって,地方の側から「権限を奪い取る」という姿勢を見せることが必要だ,という指摘が出ていたのがちょっと興味深かったです。単に権限をもらっても財源や人がないからできない,というのではなくて,(リスクを背負って)権限を積極的に受けたうえで,財源や人が必要だからということで積極的に移譲を求めていくんだ,と。現状では知事会や市長会などで意見を集約して進める傾向が強いことを考えると,なかなか難しいところもあるとは思いますが,本当に迫力をもって「分権」というものを訴えるためには,そういうある種のリスクを背負うことも必要なのかもしれません。