千葉県知事選挙

堂本千葉県知事の後継指名を受けた吉田平氏が立候補を表明したことで,千葉県知事選挙の構図がほとんど固まったらしい。朝日新聞の記事が丁寧にまとめている。この吉田氏を民主党が推薦する方向ということになり,当初,民主党主導で自民党と相乗りか,というかたちで擁立された白石真澄関西大学教授は,民主党本部の相乗り禁止の指令によって民主党の支持は取りやめとなり,自民党の県議団が支持することになるらしい。ただ民主党が一枚岩で吉田氏を推し,白石氏は全く見ないかどうかはよくわからないところ。しかし一方の自民党もぐちゃぐちゃ。記事によれば基本的には白石氏を推すようだが,一部は2005年に堂本知事と接戦を演じた森田健作衆議院議員を推し,さらに自民党県議から離党して出馬表明をしている西尾憲一県議もいる,と。
千葉県ではよくこういうグチャグチャの知事選挙が行われることがあり,2001年の選挙のときも迷走が続いた挙句自民・保守の与党が推す岩瀬良三氏と民主・社民が推す若井康彦氏,それに無党派の堂本知事の三つ巴の大接戦だったわけで。その前の沼田知事のときも,実は初当選(1981年)のときや四選目(1993年)のときも分裂気味だったらしく,二位候補と接戦を演じている。県議会では自民党が5割以上の議席をずっと占めていて(2007年統一地方選挙では少し負けたみたい),特に郡部を中心に自民党が強く,投票率が低いことで有名な千葉県知事選挙では自民党がまとまれば圧勝できるのではないかと思われる。しかし,県内では1960年代頃から京葉工業地帯を中心とした工業化を志向する勢力と工業化は県でできる範囲でとどめようとする勢力の対立が続いていたらしく(八幡,2007),以前からの経緯を見ると後者が社会党系と連合することによって知事選挙での分裂というのが起こりやすいと考えられる*1社会党系が一部の自民党系とくっついて分裂選挙が起きる,という構図は実は前の山形県知事選挙と似ている。

歴代知事三〇〇人 日本全国「現代の殿さま」列伝 (光文社新書)

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しかも今回厄介なのは,公明党の立ち位置が難しいこと。千葉県では,おそらく都市部の選挙区が小さいこともあって,県議会における公明党の存在感はそれほど大きくはない。だからふつうに考えたら自民党の勝ち馬に乗る,という行動を取りたいところだろうけど,今回自民党議員が勝ち馬として出してきそうなのが,アンチ公明党の森田氏,ということで乗ることができない。そうすると吉田氏(民主党系)か白石氏(残りの自民党系)ということになるが,バラバラの自民党系に乗るよりも,比較的固まっている民主党系に乗ったほうが勝利確率は高くなるように見えるけど,現状では公明党は白石氏に乗っているらしい。これは地方での自公協力が,ある意味中央での連立よりも強固なことを反映しているような気もするけどどうなんだろうか。他の都道府県で似たような状況が現われたとき(難しいが)の公明党の行動というのはなかなか注目されるべきだと思われるのですが。

*1:これは全くの仮説だけども,都市的な傾向がある衆議院千葉1-8区では2003年の選挙で民主党が勝利しているのは,この対立の影響もあるのかもしれない。