兵庫県知事選挙

以前取り上げた静岡県知事選挙は,そのままの構図で結局民主党が僅差で押し切ることに。戦前の予想では,いくら民主党に勢いがある(民主+元民主>自民)とはいえ,しかし分裂選挙だと自民党が漁夫の理を得るのではないか(自民>民主>元民主),という向きがあったものの,ふたを開けてみれば民主党推薦の候補が,元民主候補が30万票以上獲得したにもかかわらず勝利。今回の自民・民主は,地方政治とのつながりが薄く(県の大学学長と官僚→参院議員),同い年(60歳),新人,という非常に「その他の条件一定」に近いかたちでコントロールされた選挙であり*1千葉市長選挙よりも自民対立を表象したものになっていたのではないでしょうか。その中で,元民主の参議院議員が出るという民主党にとって不利な条件にもかかわらず,民主党が勝利を収めたことは,いま総選挙をしたときに自民党にとって相当厳しい結果になることを,最近行われた他のどの地方選挙よりも雄弁に語ってる気がします。
しかし,実は静岡県知事よりも注目するべきだと考えられるのは兵庫県知事選挙(僕が逆張りなだけでしょうけど)。兵庫県知事選挙は相乗りvs.共産という1990年代後半型の「無風選挙」で,しかも前に触れたみたいな「ボイコット運動」なんかもあるにもかかわらず,なんと今回投票率が上昇しています。僕も前回投票率はひどく低下するのではないか,と書いてそう予想していましたが,事態は全く逆だと。その投票率の上昇は,2.69ポイントの上昇と大きなものではありませんが,この上昇分はほとんど批判票=共産に結びついたらしいです。兵庫県知事選挙の構図(相乗り現職vs.共産)は前回選挙と全く同じで,現職は前回・今回とも約110万票取っているのに対して,共産党は約35万票→約50万票と約15万票伸ばしているわけです。現職側は多少落とすかなぁ,と思っていたのですがこれだけの票を確保しているわけで,前回同様支持されているんだという見方も,前回選挙でもはや一般有権者が離れて組織選挙で100万票とってる*2という見方もできる気がしますが,どっちの方がより妥当するのかはよくわかりません。組織でも100万票というとまあ立派なもんだ,という気もしますし。ただ,こういうのを見ると,兵庫県知事選挙のようなまあいわば「閉塞的な状況」ですら投票率が上がり,しかも批判票がえらく増えているのを見ると,ひょっとすると「閉塞的な状況」におかれている有権者が,結果がほとんど見えてるものであっても「選挙に行きたくてたまらない」のではないか,と思ったりするわけですが。投票率がどかんと上がると現在の連立与党には厳しい,といわれる中では静岡の結果よりもこちらの方がインパクトがあるかもしれません。もちろんいうまでもなく静岡も投票率がかなり上がっているわけですが(45.49→61.06)。こうなると都議選はかなり興味深い。特に浮動票が帰結を大きく左右しそうな選挙区,具体的には民主党が「無理に」候補を出しているような練馬区選挙区などが面白そうですね。各選挙区の投票率まで見るのも大変ですが…。地方政治シリーズでまとめて論文にできないかなあ。

*1:しかも静岡は県民柄?なのか知りませんが,県民の選好が全国的に見るとmedian consumerに近いということで,よく企業が出す新製品をテストで販売する土地に選ばれるとか。

*2:ちなみに,井戸知事初当選の2001年選挙では,相乗りvs.無所属vs.無所属で,140万・50万・50万という感じ。