「一元化」と人事

新政権の人事は非常に面白い。副大臣政務官人事を非常に注目していたわけですが,なかなか決まらず。決まらないということはやはり実質的に調整が必要になっているということなのではないか。今のところ,早くから名前が出ている財務副大臣野田佳彦氏がなっているところが興味深い。財務大臣が最高顧問の藤井氏である以上,非常に大臣に近い実務を担うことになるのではないかと予想される。また,代表候補に擬せられたことがある人を副大臣にすることで,副大臣の地位が高まるという計算もあるだろうし,またそういう人が党内に無役で残ることがないという点でもやはり民主党が政策決定の「一元化」を志向し,よく研究していることがうかがえるのではないか。一時期行政刷新担当を打診された長妻氏が,厚生労働副大臣でも年金関連の仕事がしたいと申し出た,という記事が出ていたが,実はそれができたらポストもひとつ空くうえに,布陣の重厚さをアピールできる意味でもメリットがあったかもしれない。ただまあここまで全国的に知名度が高くなった人を大臣にしないと勘繰られる,というのは大きいのかもしれないが。
個別の人事はよくわからないが,いろいろ考えさせられたのは特に文部科学大臣農林水産大臣か。この二つのポストについては,いわゆるNext Cabinet担当者を含め,他に様々な名前が挙がる中で,やや「意外」な人選となった。しかしそれはあくまでも「分担管理の担当者」として意外というわけであって,両大臣を「国務大臣」としてみると意外性は全くない。これは,政党のマネジメントで大きな役割を果たし,選挙での勝利をもたらした功労者を処遇することの難しさを表しているように思われる。(政策担当ではなく)マネジメントで重要な役割を果たしている人は,必ずしも同時に政策に詳しいとは限らないが,きちんと処遇しないとモチベーションも下がるし,これから同じように汗をかこうとする人がいなくなってしまう。自民党では,最近はあまり言われなくなったけど,伝統的には「党人派」と「官僚派」の関係で捉えられてきたところで,いつも「党人派」の処遇が難しかったところがある。結局のところ幹事長とか総務会長,あるいは国対委員長などといった役職を頂点として処遇されるわけだが,それが「二重権力」の温床になっていたと考えられるところもあるわけで。一方民主党は「一元化」を強調するために,功労者に対してそういう党内のマネジメントポストを振る余地が少ない。今回だと幹事長・国対委員長くらいになってしまうわけですが,そうするとどうしても功労者に振られる大臣が「分担管理の担当者」より「国務大臣」の色が強くなってしまうと考えられるので,それを補佐する副大臣政務官のチームが非常に重要になる,というのはそれなりに理に適っているのではないかと思われる。ただ一方で,野党ではなく政権与党になったときに政党のマネジメント,またマネジメントにかかわる人材育成をどのようにやっていくのだろう?という疑問はある。とりあえず幹事長代理とか国対委員長代理のようなポストを中心に活用することになることが予想されるが,難しいところかもしれない。やっぱり4年間は拡大小沢事務所が民主党選対になるのだろうか。
「一元化」によって,大臣の「国務大臣」としての性格が強くなるとすれば,重要なのはやはり民主党が作るといわれている「閣僚委員会」だろう。内容は今のところよくわからないが,おそらく副大臣クラスも入れることになるのではないか。ここで実務能力の高い副大臣を中心に総合調整をうまく行うことができれば(教科書的には「権限による調整」ってやつか),従来の省庁の枠組みとは違うかたちでの政策決定のパターンをある程度永続的なかたちで定型化できるものも出てくるのではないか。それができてくれば,単に特命担当大臣を作って政策の総合調整を行わせるだけではなく,「閣僚委員会」を出発点とした中央省庁の再編も考えられるし,大臣の「国務大臣」としての性格を強めることとも平仄が合うのではないかと思われる。まあイギリスほど極端にやられると,観察する方としても辛いけど。