配偶者控除

日本郵政社長人事は驚き。某所で冗談で,まさかの官房副長官,という話もしてたような気もするがw,現実には「連立」政権にとってある意味生命線になる日本郵政の社長,というかなり重いポスト。しかも,ご本人はずっと主計畑ではあるものの,それこそ郵貯の自主運用以前の大蔵省資金運用部の時代の次官経験者なわけだから,郵政官僚にとっては衝撃なのではないか。

財投改革の経済学

財投改革の経済学

それはそれとして,今日は住民税がらみの配偶者控除について興味深い記事が出ていた。

◎扶養控除廃止、住民税の扱いで難航か=存続から一転、見直しも−政府税調
鳩山政権の目玉政策である「子ども手当」創設に伴う所得税国税)の扶養控除廃止に関連し、住民税(地方税)の扶養控除をめぐる扱いがここにきて問題となっている。民主党は住民税の控除は存続させる方針を示してきたが、政府税制調査会(会長・藤井裕久財務相)の中では、国税地方税で扱いが異なることによる影響が指摘されており、住民税の扶養控除についても一転して見直しの可能性が出ている。
扶養控除廃止と子ども手当創設は、民主党がかねて主張する「控除」から「手当」への切り替えの一環。同党は先の衆院選マニフェスト政権公約)で所得税の扶養控除や配偶者控除の廃止は明記したものの、住民税の両控除についてはホームページで「見直しの対象とせず、現状のままとする」と説明している。
住民税だけ控除を残すとした理由ははっきりしないが、小川淳也総務政務官は20日の税調会合後の記者会見で「(控除廃止で)増税になる世帯が増えるんじゃないかとの指摘に対する反論の中で入った」と説明。住民税分の控除廃止で増税規模が大きくなることに対する配慮が働いたとみられる。
(中略)
ただ、住民税の方も廃止すればいいかというと、「議論はそんなに単純ではない」(政府関係者)という。税率が一律10%の住民税の場合、控除がなくなると低所得者の負担増は大きく、解決方法を今後どう探るか税調内での調整は難航しそうだ。
一方、扶養控除廃止による増収は子ども手当の財源に期待されており、所得税分の廃止では約8000億円が捻出(ねんしゅつ)できる。仮に住民税分を廃止すればさらに約6000億円が生まれる見込みで、来年度予算編成に向けた財源探しの動向とも絡んだ議論が進むことも予想される。
2009年10月21日 時事通信・官庁速報

扶養控除廃止で住民税の方はどうするんだ,というのは選挙の直後から議論があったかと思いますが,税調が始まったことで本格的に問題になっているようです。この官庁速報の記事はいろいろな論点があることを指摘していて,実際どういう方向に進むのかについてはよくわからない状態になっているのですが,毎日新聞の記事で政務官が微妙な発言をしていることが報じられています。

扶養・配偶者控除:住民税も廃止検討
政府は20日、子ども手当創設に伴う扶養控除と配偶者控除の廃止について、住民税も廃止対象に含めて検討することを明らかにした。従来は所得税のみの控除廃止を検討してきたが、同日の政府税制調査会後の会見で小川淳也総務政務官が「住民税だけの控除を残すのは徴税技術上、難しい」と述べた。
住民税の両控除は課税対象額から各33万円を差し引く制度。住民税率は一律10%で、両控除が廃止されれば、所得税と合わせて、年収700万円の夫婦・子ども2人(1人は16〜23歳未満で廃止対象外の特定扶養控除に該当)の世帯では、所得税8・5万円、住民税6・6万円と合計15万円の増税になる。

住民税について申告して所得控除が決まるわけではなくて,所得税の申告の中での扶養などのデータを住民税で使う,ということはもともとわかってる話なはずなので,まあいまさら…という感じがしなくもないですが,これは難しい。所得税の場合は超過累進税率なので,控除をやめたら高所得者ほど控除されてた所得にかかる税率が多くなるわけですが,住民税の場合はフラットな税率なので,高所得者低所得者も控除されてた所得に同じ税率がかかるということになります。
所得税の方についてはマニフェストに書いてあったけど住民税の方については書いてないんじゃないか,という批判は当然あるわけで,新しい住民税のための制度を作るか,住民税の控除をやめるにしても何らかの説明をしなくてはいけないところかと思われますが,住民税のための制度を作ると煩雑だし,地方に負担がかかるという別の問題も出てくるわけで…。フラットな税率なのでその額を計算するのはそれほど難しくなく,対象者さえわかればその分を子ども手当に(?)上乗せして還付するというのはありうるのかなぁ,と思うわけですが*1,そこでは住民税のためだけの制度を作るんじゃなくて,懸案の社会保障番号の整備が前提になるんだということで一気に進めることもありえないではないような気もします。まあその場合は子ども手当の開始時期がずれ込むかも…ということになるのかもしれませんが。いや,単純な「廃止」という以外の公約というのは非常に難しい。

*1:配偶者のみで専業主婦,というところについての還付の仕方は別で考える必要があるわけですが。