第96回会合(2009/9/24)

分権委の会合が減ってきているので,油断してサボってたら,96回会合の動画が一月たってない10月23日で消えてしまった。ヤバイ!と一瞬焦ったものの,そういえばちょっと前に観察メモ自体については書いていたのでとりあえずは一安心。しかし気をつけなくては。
その96回会合ですが,内容としては,前回の議論を受けて小早川委員が行った修正について,委員で確認することがメインとなる,比較的短いもの。修正の内容もどちらかというと技術的な内容が多いように思います。数も少ないのでその具体的な変更点を挙げると,大体以下のとおり。

  • メルクマール非該当の部分について見直しを行うべき,という内容を確認(2ページ)
  • 「3つの重点事項の見直しにあたっての当委員会の認識」を作る,内容は中間報告の記述を引用(2ページ)
  • 見直しの方法について,「なお、当該所管府省においては、条例を制定することが許容されていることについて、地方自治体に十分周知する等所要の措置を講ずべきである。」を追加(4ページ)
  • 「別紙1別表1の「見直しの方針」欄に「存置」と記載した上で、「備考」欄に「条例制定許容」と記している。」を本文に(要するに法律の条項数のカウントの仕方を変えたと)(5ページ)
  • 「標準」を許容するものとして抽象的な定義づけを行っているが,前回の委員会で「望ましい」ではあいまいということで,「特に「標準」を示す必要がある場合」とした(6ページ)
  • 「従うべき基準」を認める場合についても,「望ましい」ではなく,「特に「従うべき基準」を示す必要がある場合」で統一した(6ページ)
  • 「従うべき基準」の?について,「利用者の資格のうちの基本的な事項について」という表現にした(6ページ)
  • わかりやすい事例で説明するように,という指示があったので,保育所公営住宅を例にとって説明するために資料を用意した(6ページ)*1
  • 個別の条項についての具体的に講ずべき措置を,別表1に掲げ,地方からの要求で取り上げているものを別に表示(14ページ)
  • 前回挙げた条項数は1225だったが,事務局からの報告で条項数に重複計上が見つかったので1224へ(15ページ)
  • 「また、法律に基づいて義務付けを具体化する政令等の案についても、同様に適時の情報提供が必要である。」を追加,政令も対象になることを明確化(34ページ)

詳しい説明がされた部分としては,前回も問題になった,「従うべき基準」「標準」「参酌すべき基準」の話について。説明用の資料(「見直しのイメージ」?)が見当たらないのでよくわからないところですが,まず「従うべうべき基準」は,保育所の場合は「保育に欠ける」,公営住宅の場合は「低所得者」であるようなところで,自治体が異なる内容を条例で定めることは許されないものであると。で,そそれを受けて内容を具体的に書いていくわけですが,保育所では「保育に欠ける」を保護者の要件として書いたり公営住宅での低所得の収入や同居の親族など要件を書くのは「従うべき基準」と話が違うので,基本的に「参酌すべき基準」になると。だから,国が基準を示していても,自治体は異なる基準を示すことができる,ということになるわけです。じゃあ前回の説明であったような,「児童何人に保育士何人」,といったような「標準」に相当するような基準はどうするんだ,ということになるわけですが,これについては勧告案の別紙二並んでいるものの,どれが「標準」で,どれが「参酌すべき基準」かは示していないということ。つまり,委員会としては,三つの類型への個別のあてはめは行わず,勧告を受けた国の方で,国の示す基準の廃止をまず検討して,基準の決定が許容される場合でも,基準の要否や内容について見直しをすることを求めると。そのうえで,勧告で示した条例制定の基準の三類型にしたがって見直されることが想定されるが,その見直しは個別の制度と分権の趣旨に立ち返った大胆な見直しになることを期待する,という内容になります。まあ要するに,ここはWGのヒアリングでギシギシとやらずに,国の方にボールを投げ返した,ということになるのではないかと。自民党政権のときにこれをやろうとすると,「骨抜きの危険性も」とかメディアでかなり批判的に書かれることになりそうかと思うのですが,政権交代が行われたことでその辺がよくわからないということもあるのかもしれません。委員会としても,大枠で書こうとする「分権委は甘い」とか言われる可能性もあるし,細かく書いて意思決定を縛ると勧告を受け取ってもらえないかもしれない,というところがあったのかもしれません。既に,分権委が廃止を含む見直しを提言した「義務付け」892項目のうち,地方側の批判が強い保育所の最低面積や生活道路の基準など103項目を優先的に見直す方針を決めたという報道もあるので,さしあたりはこの形式でよかったのかもしれませんが。ただ,何が「従うべき基準」「標準」「参酌すべき基準」に当たるのか,それが各制度の中でキチンと整合性が取れてるのか,というのはもう少しちゃんと観察していく必要があるようには思います。
委員間での議論としては,露木委員から,地方(特に小さな自治体)としては勧告をどのように捉えるべきなのか,という話が出ます。小さな自治体にとって条例化というのは非常に大変だろう,ということです。これについて小早川委員からは,条例でひとつひとつ定めることが基本ではあるが,国の基準で問題ないという場合にはその通り条例化するのは責められるべきではないだろう,という見解が(これは「独立性」をめぐる問題に似てる)。あとはこの勧告では基準を「切り下げる自由」を与えられることになったわけですが,勧告自体は基準を下げるべきだという方向に向いているわけではないことはこれまで確認してきたところで,国に縛られているからレベルを下げられないというのではなくて,レベルを下げないという責任は自治体・住民に課せられることになるという見解が示されていました。これは財源のところまで考え合わせると,なかなか微妙な問題を孕んでいる気がしますが…と思ってたら,西尾代理からはこの点について,現下の財政状況のもとでは引き下げに傾きやすいのは事実だから,義務付け・枠付けの緩和をしたときに,関連する国庫補助金があれば,この国庫補助金を見直しに合わせたようなかたちで変えることが必要であることを「おわりに」などで書いてほしい,という要望が出ていました。
義務付け・枠付けに関しての分権委での議論は,ここまで約二年半続いたわけですが,今回で一応打ち止めということで。なかなか感慨深いものです。ただ第三次勧告についてはこの義務付け・枠付けだけではなく,国と地方の協議の場についてと地方自治法制についてはもう少し議論して勧告に盛り込むということ。西尾代理が案文の素案を作るわけですが,これは結局あと一回(97回)の議論で勧告になるわけですよね…。この点にはまあ多少の温度差を感じなくもないですが。

*1:でも,説明の中で触れられていた「見直しのイメージ」は,公表されている文書の中には見当たらない,第三次勧告案の概要として言われているものと似たような感じのものが添付されている。