地域主権戦略会議(第3回・第4回)

地域主権戦略会議第4回の議事要旨が発表されたのでチェック。しかし率直にいって議事要旨では議論の内容はよくわからない。特に問題だと思われるのは,資料の説明がどうなってるのかよくわからないところ。第4回の場合で言えば,資料1(神野議員提出資料)と資料2(北川議員提出資料)についてはまあ多少なりとも独立した項目立てがなされているが(とはいえその内容は本当にさわりだけ),それ以外の上田議員・北橋議員・橋下議員の提出資料についての説明は議事要旨の中にない。以前の地方分権改革推進会議の経験を考えると,たぶん説明はあったのだと思うが,具体的にどこになっているのかわからない。民主党政権は,政権交代後情報公開に力を入ているという評価があって,それ自体は基本的にそのとおりだと思うけれども,この会議のように自民党政権下でわりと公開が進んでいたものについてはどっちかというと後退している印象がある。例えば審議会のような会議体で内容が動画で公開されているのは,成功した「事業仕分け」の他は政権肝入りの「新しい公共」円卓会議くらいしか思いつかないし。事業仕分けは一般へのアピールが重要だし,「新しい公共」の方は参加者見てもまあ…っていう感じ。このブログでもいろいろなところで書いているように,審議会の公開というのが常に望ましいとは思わないが,少なくとも前政権から後退するようなところがあるとすれば,そこはきちんと説明を入れた方がいいように思われる。
会議の内容については,義務付け・枠付けの緩和と一括交付金,それから市町村への権限委譲が三本柱になっているところ。北川主査の出先機関改革,というのもあるが,これは今のところ全体像がよくわからない。義務付け・枠付けの緩和については分権委の委員でもあった小早川議員が主査になっているところもあって,基本的には分権委の続きだし,市町村への権限委譲についてもまあほとんど変わらない。そこでやっぱり問題になってくるのは一括交付金についての議論。第3回の地域主権戦略会議の議事要旨では,補助金が改革される各省の政務官(と事務官)が一括交付金になんだかんだと反対していることが中心になっていて,内容については

一括交付金化は、経常と投資の区分や現金給付や保険をどう考えるのかという話とパッケージではないか。現金給付や保険は地方における個性の問題とは関係ないので国が一律に責任を持ってやるという発想。しかし例えば、学校の先生の給料と学校の建物の整備について、経常と投資で別かというとそうではないのではないか。義務教育の国庫負担金を一括交付金化するときには、裏負担の地方交付税の話とパッケージにしないと、負担金だけは一括交付金化されるが裏負担は交付税のままだという訳の分からないことにもなる。

とあり,重要な論点があげられていることはわかるのだが,具体的なところはよくわからないまま。さらに第4回でも,一括交付金化がメインテーマになっているにもかかわらず,省庁や地方へのヒアリングのざっくりとした印象が書かれているほかは,

○ 一括交付金の配分については客観的な指標が必要だと思うが、人口や面積、地域の格差を解消するためにはどうすればよいかということを考慮に入れながら決めてもらいたい。
○ 一括交付金化について。1つ目は、現金給付は国、サービス給付は地方という大原則を大事にして、地方の自由度が拡がるものを対象としてほしい。2つ目は、一括交付金化を理由に総額を削減してもらっては困る。3つ目は、補助金の統合に終わらせては今までと同じであり、省庁の枠を超えて大きく括るという決断をしていただきたい。

といった注目すべき指摘はあるが,これが具体的にどういう議論につながっているのかはよくわからない。議論との関係といえば,個人的に一番気になるのは,第4回の橋下議員提出資料がどうなったのかなぁ,というところ。この資料で扱われている「一括交付金」の考え方は,地方分権改革推進委員会のときの井伊委員提出資料(例えば92回の提出資料)を彷彿とさせるものがある。ただ,この感じでは言葉の使い方がかなり違ってて,橋下議員提出資料でいう「一括交付金」は井伊委員提出資料の「新しい交付税」みたいな感じだし,また,橋下議員提出資料の「委託金」と井伊委員提出資料の「新しい交付金」が対応しているように見える。つまり,橋下議員のいう「一括交付金」は補助金を組み替えるものというよりは,交付税を外形的な基準で振り分けるような感じに見える,と。そういうところもあってこの議論をもう少し詳しく知りたいところだが…と振り出しに戻る。やっぱりここは「大阪維新」との関係に留意しながら議論を追ってみたいところ。ただまあ「議論」といっても,これだけ資料が出ているのに(資料1+資料2,さらに上田・北橋・橋下各議員が資料を提出),議論の時間は70分しかないので,どこまで実質的なものなのかというと怪しいような気もするが。