補選・その後

大阪府大阪市関連の動きはとても早い上に,ニュースの量も割と多いので,追っかけるのはなかなか大変なところ。おそらくこのあたりが東京のメディアでは「橋下知事が何かやってる」とは思うものの,具体的な内容についてはほとんど議論されていないことの一因なのではないかと。しかも最近は多くの大阪府政関係者がTwitterをやっていて,こちらからも情報が流れてくるのがなかなか大変。まあ去年までは政治の場面でほとんど影響力がなかったものなわけで,とりあえずは流し読みをしておけばいいような気もしますが,それもなぁ,と。ためしに自分で作っている大阪府政関係者(首長・府議市議など)のリストで,5月の福島区補選から参院通常選挙までの期間でぼちぼち維新の会関連でTogetterでまとめていたツイートをちょっと公開してみたいと思います。どのツイートをまとめに入れるかは僕の判断になってますし,必ずしも網羅的なものではありません。たとえば,おそらく日本で最もつぶやく地方議員の一人である辻義隆議員のツイートを全て読めてるわけでもないでしょうし。
Togetter−大阪:自民党−維新の会
以下,僕も必ずしもついていけてないですが,最近の情勢について備忘を兼ねてちょっとしたまとめ。たぶん,大阪における地方政治について一番積極的に追っかけているのは産経新聞だろうと思われます。以前から続けている橋下日記に加えて,本にもなった橋下徹研究,さらに最近ではどこへ行く,橋下府政というコーナーも設けて基本的に毎日何らかの情報を入れてます。ちなみにTwitterだと@seijinews というアカウント。産経では他に東国原知事の密着もやっているようで,中央で物量を投入して他の新聞社と同じ記事を書くよりも,(ブロックレベルとかで)こういう地方政治に特化していったほうが,少なくとも社会的意義としては大きいのに,と思ったり。あとはこちらも本を出している読売新聞関西発の「府政 橋下改革」。こちらも就任時からの記事がバックナンバーで読めるのが素晴らしい。しかし,読売にしてもなんで地方ではとても興味深い記事をバックナンバーまで読ませてくれるのに,中央ではしょーもない記事でもすぐリンクを切るのだろうか。
まあそれはいいとして。ここのところのニュース・トピックについては以下のような話題があるようです。まずは,ちょっと前に大阪市にやってきた50人近くの中国籍の人たちに対して生活保護を出すかどうか,という話。このトピックについては,知事・市長ともにしばしば発言するほか,府議市議も極めて様々な発言をするので,一応フォローしてはいるものの,府と市の関係という意味ではどういうインパクトがあるのか現状ではちょっとよくわからないところ。ただ,日本の生活保護制度は,中央と地方が高度に融合していることの象徴のような制度でもあるので*1,どこかから大都市問題に絡んでくる可能性はある。府知事や府議はこの問題についてかなり強く大阪市の対応を批判していたところですが,最終的に大阪市が生活保護費支給の打ち切りを決めたことについては評価している模様。この問題についての経緯と大阪市厚労省の対応については,平松市長のブログ大阪市のウェブサイトに詳しい。なお,最近のニュースとの絡みでいえば,生野区大阪市長が行ったタウンミーティング(区長公選制導入批判をしたとされる)での公金支出に対して,知事が大阪市はシロアリと表現したものの,今回の生活保護受給中止ということで,大阪市は働きアリと絶賛したという報道も。
参院選・補選の直後は,知事が市長に出るとか統一地方選挙における新人候補の政治資金獲得を目指したパーティーを行うとか,(多くの議員が自民党籍をもつ)維新の会が独自色を強めて対立する姿勢が目立っていた。特に興味深いのは,大阪市の議員定数半減の提案を行うことを表明しているところ。提案では,議員数を89から44〜45まで一気に縮減するということで,現在の選挙制度・選挙区を維持するなら最低で定数2だった選挙区が定数1の小選挙区になることなどが想定されるわけで,そうなると維新の会の躍進はかなり現実味を帯びてくる。まあ現状ではなかなかその改正案は議会を通らないと思われるが,統一地方選挙のときに政党として掲げる「マニフェスト」にはできるのかもしれない。次回4年後というのはあまりにも遠すぎて想像つかないところがあるが,意地悪な頭の体操としては,2011年4月の統一地方選挙マニフェスト→他党(たぶん具体的には民主党?)を引き込む→知事が市長選挙に勝って議会と対立→議会の解散という筋がないわけでもないので,そうなると効いてくる話ではあるかもしれない。念のために書いとくと,これは非常にレアなシナリオなわけですが,議員定数半減の提案をしても失うものがほとんどないことを考えれば,逆に提案しない理由もないかな,と。
議員が維新の会へ流れている自民党の側としても,いろいろと苦渋の選択があるようです。選挙前から自民党籍を持って維新の会に所属している議員に対しては7月15日を期限として離脱を求めていました。この間,厳罰論を求める声と知事との全面対決を望まない声があったようですが,その後20日府連の党紀委員会が開催されて,一応は維新の会参加メンバーに離党勧告や除名などの処分を科すことになったようです。ただし,「来春の統一選に向け,維新の会が自民議員への対抗馬となる新人を公募していることが「反党行為にあたる」と判断」していて,「対抗馬擁立をやめれば処分しない」とするそうです。現職の維新の会候補が選挙に出ることは対抗馬になるのだろうか,さらに自民党としては現職が維新の会に流れた選挙区について新人を擁立するのか,というかなり難しい問題があるような気がしますが,一応妥協の余地??を残すということでしょうか。この処分に対しては,知事側も全面戦争だ,として,みんなの党との連携を示唆しつつ自民党との全面対立を表明します。背景としては,やはり統一地方選挙で最終的に自民党と維新の会が議席を争わないといけないことがあるのでしょう(もちろん以前は自民党同士で競争してたわけですが)。特に府議レベルではこの問題は深刻であって,維新に参加する青野議員のように,自民党籍の問題を維新の会側からも提起する議員も出ています。
とはいえ,そういう話って国会議員から見たらある種の「誤爆w」なわけで。「全面戦争」を報じた産経新聞の記事にもありますが,やはり国会議員としては自分の支持組織を構成する府議に分裂されたら困るし,しかもみんなの党の側に行かれてしまうと本当に困るわけです。だからこそ,「府連」としては維新の会に対してルビコン川を渡るような処分が難しくなるわけで,「対抗馬擁立をやめれば処分しない」というほとんど意味不明な呼び水を出したりする,と。非常に興味深いのは次の日の報道で,橋本知事が敵は市議,都構想賛成なら連携と言ったという話。自民党としてはこう言われるとちょっと弱い。国政レベルでみると,現在大阪府下の衆議院議員は1人だけでもあるわけで,次回の選挙を考えると野党の気楽さで「大阪都政賛成!」とか中央レベルでいいかねないんじゃないかな,と。これは(集権的な民主党に比べて)分権的な政党組織をもつ自民党では十分にありうる話だと思われますが,自民党としては二つの意味で諸刃の刃になりうる。ひとつは,やはり重要な支持組織である市議が宙ぶらりんになってしまうこと,そしてもうひとつは,全国レベルで必ずしも整合性が取れない政策を進める可能性があるということ。後者の方はまだあまり意識しづらいところではありますが,集権的な政治システムのもとで再分配を期待する地方がある一方で,都市において分権化を進めるとなると,自民党の内部で都市−地方の裂け目がいまよりも深くなるのではないかと。

*1:例えば,大阪市長は従来から生活保護については100%国が財政的な責任をもつことを主張していて,このあたりは以前提出された全国市長会の意見表明に近いところがある。