統一地方選挙・後半戦

ざっくりと思いついたこと,というかTwitterに書いたことのまとめだが。
市議選については,これだけ有権者と候補者個人が離れつつあって,しかも事前運動や選挙運動の規制で候補者個人からアピールすることが難しい中では,もはや50人から40人を選ぶ,みたいなのは無理だろう。たぶん最もひどいのは世田谷区なわけだが,事前の予想もほとんど形成されない中で82人から50人を選ぶ,って戦略投票のしようもないし,お賽銭を投げてるのとほとんど変わらないんじゃないかとすら思う。公選法選挙制度をセットで変える地方選挙制度改革をしないと,「地方政府の民主主義」(苦笑)自体もう持たなくなってしまうのではないかと。
結局,有権者に対して情報を縮約したかたちで見せる政党のようなものが決定的に重要になるわけで,統一地方選挙前半(とその前の名古屋市議会議員選挙)では,地方政党が新しい可能性を示したと思われるわけだが,それができたのは中選挙区制っていうか一応領域内で選挙区が分けられていて,定数が相対的に小さいからに他ならない。ただ,どこまで定数を小さくすればいいのか,というのは分からないところがあることも,今回の選挙は示していると思われる。というのは,三木市議会議員選挙で,「三木新党8人のサムライ」という地方政党?が6人通して市議会(18人)の1/3を確保したということ。これで市長が再議を出してもひっくり返せないわけだから,まあ成功というべきだろう。これについては,以前僕自身「市では政令市以外はきついと思ったり」とかつぶやいたりしたが,この規模の選挙区でそれなりに票を割ることができて*1,一定数の当選が可能なのであれば,選挙制度(というか投票方式)の変更までせずに,選挙区定数の上限を規定するようなことでもよいのかもしれない。あくまでも漸進的に,という意味でだが。
個人的には有力候補が競り合っていた高崎市吹田市に注目していたところ。それは,市長選挙と連動して議員の方も動くかもしれない,と思ったからだが,高崎についてはみんな無党派で出ているのでちょっと気合を入れて分析しないと分からなそう(なので今回はパス)。吹田市については,大阪維新の会の元府議が現職に競り勝ったものの,大阪維新の会がらみの議員の受け皿がほとんどなく,「維新の会」を正面に出していた候補に10000票以上が集まり(なんと第二位にダブルスコア!なお,この候補者は「大阪維新の会」とは無関係とのこと。ウェブサイト見てたら緑基調だし,「大阪維新の会」にリンクも貼ってあるので非常に分かりにくい…),自民党と「大阪維新の会」の両方のポスターをブログに貼るようなスタンスの候補が第三位に食い込むというなんとも微妙な結果になった。ちょっと注目してた吹田新選会の方は,市長選挙はまあ完全に維新に食われて最下位に沈み,議員候補も第二位に入った現職(代表?)除いて当選したものの下位に沈んだ。立候補していた三人を足しても市長候補が取った票に5000票くらい足りないから,まああんまり…といった感じだったのだろう*2。ただ,自民党の新人候補が相次いで落選していたのはちょっと注目かもしれない。維新に食われた,というのもあるかもしれないが,風がなくかつ自民党で固定的な支持者もいない,という中で(特に都市では)非常に難しい,ということになってるのではないか。まあ,高崎にしても吹田にしても,市長選挙は競ることが予想されてるわけだから,それぞれの候補者を推す地方政党が出てきてもおかしくない(京都党を想起),と思っていたわけだが,今回はどうやらそういう現象はなかった模様。今後,合併市で市長選と市議選を一緒にやるところは出てくるだろうから,その辺りに注目,というところかな。
最後にひどい選挙制度として名前を挙げた世田谷区。区長は保坂展人氏が当選ということでTwitterのTLが盛り上がっていたが,議会の方は以前とあんまり変わらない状況。別に社民票が増えて保坂氏が勝った,というわけでもなく,前回自民党公認だったのに今回は公認漏れした無所属候補も含めると,自公共はほぼ現状維持。民主とネットが減らした分を中心にみんなの党が持ってったということで,まあよくある話かな,と思ったり。民主党の市長候補と民主党市議候補の得票が同じくらい,というのをどう評価するかにもよるけど,保坂氏を勝たせたのはある種の既成政党(というか知事も含めた既成権力?)批判のような感じがする。まあ都市らしいといえば都市らしいが,それって結局革新自治体への回帰だとすると(勝った方も原発批判とかしてるし…),ここではまあ保守分裂でセレブが当選をさらっていった,というような典型的に1990年代以降の地方政治の構図のような気がする。まあ世田谷は選挙制度の問題が大きすぎることはあるが,この構図で結局首長がたいして何も出来なくて,有権者が政治不信を貯めていくとすれば*3,なんとも非生産的なことには変わりがないが,ここについては当面推移を観察していくしかないだろうな,と思うところ。
そうだ,絶対書かないといけないと思っていたことを忘れてた。今回の選挙に関して都市だけではなく町村議会議員選挙まで全てフォローした公共放送はなんていうか本当に素晴らしかったと思います。僕がこんなところで言っても意味はないですが,記録しておかないと。

*1:なお,第一位当選の28才の候補がダントツで票を集めてるので,仮にこれを割ることが可能であれば,共産党の当選者二人を追い越してもおかしくなかった。こんな仮定に意味はないが。

*2:仮説としては,市長選に立候補した候補の個人票がそのくらいあった,というのもあり得るがよくわからない。

*3:保坂氏が昔の一部の「改革派首長」のように,カリスマティックなリーダーシップを発揮して色々やっていく可能性があることは否定しませんが。