首長たちの革命

何となく本屋で目にして,著者の前著*1が興味深かったこともあり,『首長たちの革命』を読んでみた。この本は,主に河村たかし竹原信一という二人の地方自治を賑わす市長に焦点を当て,関係者へのインタビューをもとに人物像を描き出すというものになっている。なお,橋下徹知事についても副題に名前が出てきて表紙には写真もあるが,本人へのインタビューはなく,大阪維新の会の浅田議員などへのインタビューを中心に,分量も圧倒的に少なくオマケみたいなものになっている。企画自体は2010年の年末に始まったもののようで,そこから数ヶ月でインタビューを敢行し,本にまとめているわけだから,細かい分析をしているわけではない。しかしその分却って生に近いようなコメントがそのまま出ている感じがして,とても興味深かった。
この本で描き出される河村市長の像は,豪放磊落なイメージとは逆に,どちらかといえば小心で,悪く言えば計算高いような人間となっていて,もともとターゲットであった公務員の改革を半ば断念して,より扱いやすい地方議会にターゲットを絞ったところがある。それに対して,竹原市長は,良くも悪くも自分の信念(と表現して良いものか…詳しくは本書を見ていただきたいところ)に忠実で,阿久根市という民間部門が極めて厳しい状況に陥っている過疎の町で,公務員が特権的な「身分」に置かれているのをとにかく改革(というか破壊)しようとする人物として描かれる。これは竹原市長のある種の理解不能さに起因するところがあるとは思うけども,この本の筆致からはふつうの「政治家」であるところの河村市長よりも,何かそういうものとはちょっと違うところのある竹原市長の方により「革命」を見ている感じはする。まあその後の未来というのはよく分からないのだけれども。
あと,この本で実は一番興味を惹かれたのは,同市のもうひとつ全国的に有名なところだと思われる,AZスーパーセンターの牧尾社長が,阿久根市の政治についてコメントしているところ。これは,堀江貴文氏この記事に以前リンクを貼って,確かそれで読んだ記憶があったのだが,地元における最大の企業であり,かつ,結果的に地元の「民意」のあり方に大きなインパクトを与えていると考えられる企業の社長が,竹原市長に対して好感はないといいつつも,一定の評価をしているのは興味深い。僕は基本的には最近の地方政党の台頭というのを,都市(とりわけ大都市)の存在と関連して理解しているが,結局のところ,都市的な生活様式というのは「大都市」だけに限ったものではないし,当たり前だが,どこまで「地方」という生活様式のようなものがあるのかは,わからないところがあるのだろうと改めて思うところだった。

首長たちの革命

首長たちの革命

*1:民主党代議士の作られ方』,2010年

民主党代議士の作られ方 (新潮新書)

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