というわけで,「フクシマ」論について。他のところの評価でも出ているところだが,歴史や地元の様子をしつこく書いてる3章・4章が読ませるし,非常に興味深かった。逆に言うと,5章・6章がやや残念というか,微妙な一般化っぽい議論が乱暴な感じがする。地方自治の研究をしてる人間からすれば,そんな言い切り方するのは怖いなぁ,というところが少なくないので。しかしそれにしても,修士論文でこれくらい書ける筆力があるというのはホントに立派だと思う。最近では,修士論文を出版したあとで論壇デビューみたいなことも全く珍しくないわけだが,敢えて戦略的にそういうことを考えるとすれば(著者がそう考えているかどうかは別に),一般化できる薄いことを言うよりも,この本で扱うように,ひとつの重要なテーマについて世に問うというのは重要だろう。最近の政治学とか経済学は,とにかく投稿しろということになるわけですが,社会学ではこのように本として提示できるところがひとつの魅力だし,また,そうじゃないと伝える事ができないこともあるはずなんだと思う。
- 作者: 開沼博
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2011/06/16
- メディア: 単行本
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本書の鍵となるのは,おそらく「メディアとしての原子力」というところだろう。過疎の原子力ムラと,中央で政策決定を行う<原子力ムラ>(「反対派」を含めて)を「メディアとしての原子力」でつないで,両者が対称だ,という議論はなかなかに興味深いし魅力的。ただ,両者が「近代の先端」を夢見て共鳴してた,っていう話は分かるような分からないような…。このあたり,経済成長の議論と併せてもう少し展開されるとよかったのかな,と。
- 作者: 村松岐夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1988/06
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- 作者: 稲継裕昭
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2000/12
- メディア: 単行本
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- 作者: スティーヴン・R.リード,森田朗,西尾隆,新川達郎,小池治
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 1990/09
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- 作者: 伊藤修一郎
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2002/04/01
- メディア: 単行本
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