パラグラフ・ライティング(特に市大生向け)

文書の書き方本のようなものを個人的に勧めることはほとんどやったことがないのだが、この本『論理が伝わる世界標準の「書く技術」−「パラグラフ・ライティング」入門』(講談社ブルーバックス)は、学生のみなさんにぜひ読んで頂きたい。例年のゼミ、それから特に去年の基礎演習では意図的にパラグラフ・ライティングによって文書を構成するということを意識してレポート・ゼミ論文の書き方を指導してきた(つもり)だが、私自身が欧米でパラグラフ・ライティングの指導を受けてきたわけではないので手探りで演習をしている感じがあった。うまく表現している簡単な本があればいいなあ、と思っていたのだけども、この本は完全にその役割を果たしていると思われる。

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

本の内容は非常に単純なもので、パラグラフを基本単位として文書を構成するために何をすればいいか、まあこれだけと言っていい*1。日本語で文書を書くときは「起承転結」や「序破急」というものがしばしば強調されるが、論文のようなフォーマルな文書ではそういう「展開の妙」は全く必要ない。必要なのは読み手に理解してもらうという一点だけであって、そのために何をすればよいのか、ということだけを考えればいいわけだ。
著者は本書全編も「パラグラフ・ライティング」で構成していて、まあ無理してる感じのところもあるんだけど、だがそれがいいw 実際の論文のような文書では、本書でいうような「パラグラフ・ライティング」とはやや違うような書き方がされることが全くないわけではないが、それもこのような「パラグラフ・ライティング」が基本にあってこそ、という話である*2。その基本を自ら実践しているところは素晴らしい*3。また、折々で用意されている練習問題も理解を助けるものになっているといえるのではないか。
この本をきちんと消化した上でレポートやゼミ論文を書くというのは大学生活の中でひとつの重要な達成になると思う。大学院生で、「論理的じゃない」とか指導教員に言われてしまう方にとっても良いヒントになるんじゃないだろうか。もちろん、私の授業でレポートやテストを課しているとき、本書に忠実なかたちで文書を書いてきた答案については高く評価されることになるのは間違いない。

*1:なので、それ以上のものを求めてる方には別にお勧めしません。

*2:ウェブの文書、というのはこの点難しさがある。私が書いている文書ではウェブ版の編集過程で紙版のパラグラフが実質的に解体されてしまうのだが、これはウェブで長いパラグラフがあると(このブログのように)却って読みにくくなるという問題があるというのは否めない。

*3:ひとつだけ気になったのは、各パラグラフの冒頭が接続詞で始まるケースが多いこと。これはあんまりこなれていない感じがする。