最近のいただきもの

頂いているのにぜんぜんご紹介できていないのですが。
イリス経済研究所の和足憲明先生から、『地方財政赤字の実証分析−国際比較における日本の実態』を頂きました。日本の他に英米仏独の地方債について研究した労作です。中央統制と市場規律で地方財政赤字を説明しようというアイディアで、統制も規律もいずれも弱いような国では地方財政赤字が大きくなるという仮説はクリアで個人的にも納得の行くものだと思います。また、分析から得られた本書の結論はなかなかにラディカルなところがあります。

神戸大学の大西裕先生からは『先進国・韓国の憂鬱』をいただきました。韓国の福祉政策を中心に、新書とは思えないインテンシブな分析をされていて勉強になります。左派(と思われている)政権で福祉政策が進まない、というのはまさに日本でも同じような話があったわけで、他の国の経験から学ぶというのはまさに比較政治を研究する重要な意義でしょう。しかし大西先生、最近は選挙管理の研究をずっとやってらっしゃると思ったらいつの間に…。
先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)

先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)

一橋大学の中北浩爾先生からは『自民党政治の変容』を頂きました。小選挙区制の導入による政党の近代化といったような戦後の自民党政治に対する典型的な改革案とは違うところで何とか政治の現代化を議論しようという香山健一氏を中心とした議論は極めて興味深いものだと思います。もうひとつ、安倍首相の「右傾化」について、自民党の野党転落を受けてそこで求心力を得るための活動であるという分析は説得的であったと思います。自民党のように一定の基盤を持った政党であっても野党であるということは困難なのだということを改めて学んだように思います。
自民党政治の変容 (NHKブックス)

自民党政治の変容 (NHKブックス)

甲南大学の西山隆行先生からは『アメリカ政治−制度・文化・歴史』をいただきました。単著ですから様々な分野について統一的な観点で書かれている教科書だと感じます。アメリカの政治制度については権力分立が強調されることが多いようですが、本書では所々に出てくる政党がいかに重要な存在であるかが説明されていて、この点で従来の教科書とはずいぶん違うのではないかという印象を受けました。
アメリカ政治 制度・文化・歴史

アメリカ政治 制度・文化・歴史

あと東洋経済の山本さんからご自身が編集された『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』を頂きました。「自信があるなら、来てみれば?」から始まって、なかなか刺激的な言葉に溢れてますね。留学を考える学生の皆さんにも参考になりそうです。てか、僕も書かないといけないんですけど…。NASAといえば、中公新書の『NASA−宇宙開発の60年』もおすすめ。NASAの歴史で、内容はNASAをめぐる政治過程です。政治学者が注目するようなアクター間の関係よりも、歴史の叙述に力点が置かれていますが、NASAをめぐるアメリカの官僚政治や宇宙に関する国際政治についての議論は非常に興味深いものです。著者は、東大の宇宙工学から科技庁→退職してアメリカで科学史Ph.Dということですが、こういう方が文科省に戻って高等教育政策とかを扱うようになるとずいぶん違うのかなあ、と思ったりしてしまうところ。なお宇宙と国際政治についての分析は、鈴木一人先生の『宇宙開発と国際政治』、NASAを扱った政治学の分析といえば、Vaughan, D. The Challenger Launch Decision: Risky Technology, Culture, and Deviance at NASAが有名です。
NASA ―宇宙開発の60年 (中公新書)

NASA ―宇宙開発の60年 (中公新書)

宇宙開発と国際政治

宇宙開発と国際政治

The Challenger Launch Decision: Risky Technology, Culture, and Deviance at Nasa

The Challenger Launch Decision: Risky Technology, Culture, and Deviance at Nasa