代議制民主主義

京都大学の待鳥聡史先生から『代議制民主主義』を頂きました。いつもありがとうございます。ていうか今年中に二冊目の単著を出すという大車輪ぶりで大変です…(一冊目はこちら)。2015年は「民主主義」をテーマにした書籍がたくさん出て,色々話題にもなりましたが(そういえば僕も出しました),そのトリを飾るにふさわしい本ということではないでしょうか。草稿を拝見しておりまして,僕のほうにも過分な謝辞をいただきありがとうございます。
すでにかなり高い評価がなされていて,色々な読み方があるかと思いますが,政治制度に関心を持つ研究者としては次の2つの点が非常に興味深いと思いました。まずは権力分立について,マディソンの話をベースに持ってきて議論されているところです。自由主義と権力分立を結びつけて制度的に議論するということ で,全体の見通しがクリアになっているように思います。「マディソン」という固有名詞についてはそんなに説明があるわけでもないので,イメージ出来ないところがあるかもしれませんが,自由主義の制度的な表現として理解していくとわかりやすいのではないでしょうか。
もうひとつ,より興味深く読んだのが,3章に挙げられていた,執政制度(大統領制−議会制)と選挙制度(多数制−比例制)を用いた「4類型」です。議会制における民主主義の分類に挑んだレイプハルトを踏まえて,より包括的な議論を目指すものであって実にチャレンジングな話だと思いますが,説得的だったと思います。大統領制・比例制をとる国−ラテンアメリカに多い−がコンセンサス型,というと,はじめは実際のところラテンアメリカでは政情が不安定なところが多く,急激に大統領の権限を強めるところがあるのでどうなんだ?と思ったのですが,ここで展開されている議論を踏まえれば,高度に「コンセンサス型」だからこそ,その維持が難しいという話になるのだと思います。執政制度・選挙制度ともに,質的に異なるものとして分類されるべきか,連続的に捉えられるものとして理解されるべきかについて様々な議論が提出されていますが,思い切ってこういう分類をすることで見通しがクリアになりますね*1。類型化には仮説的なところもあると思いますが,こういった類型をベースに,それぞれの収斂と中央−地方のマルチレベルを見ながら国際比較をする,とかいう壮大な研究あるだろうなあと夢が広がるところです。
ただ,この類型化について一点だけ残念だったと思ったのは,名前ですねー。多数決型・コンセンサス型と並んでいる類型として,「中間型1・2」よりはもっと大胆に名前をつけてもよかったのではないでしょうか,と思ったり。まあ僕がいいネーミングをすぐに思いつくようなセンスはないですが,中間型1のほうは政党内競争・協力がクローズアップされやすくて,中間型2のほうは政党間競争・協力がクローズアップさ れやすい,みたいなところでいい名前が思いつけば,と思いました。

*1:もちろん,本書でも両制度の「収斂」については議論されています(4章)