縮小都市の政治学

加茂利男・徳久恭子両先生を編者として,『縮小都市の政治学』という本を出版することになりました。これは,2011年度〜2013年度に加茂利男先生を研究代表者として行われた科学研究費補助金のプロジェクト「縮小都市における政治空間再構築に関する国際比較」の成果です。港湾都市を対象として,「縮小都市」と呼ばれる都市の縮退現象とそれに対するそれぞれの都市の政策的対応について論じるもので,一応一人一人が寄稿するかたちにはなっていますが(ひとつだけ共著の章はありますが),科研のメンバーでずっと議論してきたことを背景にそれぞれの章を分担執筆しているので,それなりに問題意識を統合して書かれた共著本ではないかと思います。その問題意識は,私自身が書いた『大阪』やシノドスに寄稿した「縮小都市,あるいは集積の分散」と共通するもので,「社会経済的な意味での都市」と「政治行政的なまとまりとしての都市」のズレに注目するものです。ご関心のある方には,各都市の「縮小」とそれに対する政策対応を踏まえて,より理論的なかたちでまとめられている最終章の曽我論文をぜひ読んでいただきたいと思います。
私自身は日本の函館市下関市を対象として,国の港湾政策や市町村合併モータリゼーションがいかに「縮小」(というか上記のズレ)を生み出しているかを議論しています。「港湾」という都市の中心が時代とともにどのように変遷してきたかを議論する,という意味では,個人的に「庁舎」という中心を議論した『建築と権力のダイナミズム』所収の論文の姉妹編という位置づけです(同じ岩波書店,同じ編集者の方に仕事をしていただきました)。うまくいくかわかりませんが,「都市の中心」を考える作業はたまに続けたいですね。次に考えているのは「鉄道駅」であり,「ショッピングモール」も視野に入ってきますが,ここ数日「道の駅」の研究なんかも面白いかも,と思ってます。

縮小都市の政治学

縮小都市の政治学

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

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