イタリア現代史

藤武先生から『イタリア現代史』を頂きました。ありがとうございます。面白く拝読していたのですが,やはり知らない固有名詞 が多くて読むのに意外と時間がかかってしまいました。全編手堅くまとめられたと思いますが,特に1950−70年代くらいの話というのは個人的に全く知らないところだったので,非常に興味深く読ませていただきました。マフィアの話というのはよく聞くわけですが,テロについてはお恥ずかしながらほとんど知りませんで,首相であったモーロの暗殺事件などは正直驚きました。日本でも新左翼が激化していれば…というのがなかったらとは言えないのかもしれません。
全体的な特徴として,本書でも書かれておりましたが,大統領の役割を強調されていたのは興味深い論点だと思いました。最近だと Margit Tavitsとかも書いてましたが,議院内閣制の「象徴的」な大統領でも権限があればかなり重要で,イタリアのように調停者として一定の権限が与えられているとまさに重要な(時には党派的な)ポジションということになるのだと思います。読ませていただいて,改めて伊藤先生が以前にTwitterで大統領の重要性を書かれていたのを思い出しました。
もうひとつ,読んでいて面白かったのは,これもTwitterでよく議論されている論点ですが,なんでイタリアの司法はこんなに独立性が高かったんだろうか,というところです。マフィアとそれに連なる政治家と戦って,「第二共和政」へとつながる極めて大きな政治改革や大統領の選出にも影響を与えるというのはかなりの独立性だと思うわけですが,その独立性の源泉っていったい何だったんだろうかと。共産党が強かった上に同党とキリスト教民主党が「歴史的妥協」をしたりしたので,司法には党派的なアポイントはできなかった,ということなのかなあなどと思いながら読んでましたが,それこそuncommon democracyでよく一緒に引き合い出されるけれども司法の独立性は弱い日本との比較というのは面白いのかもしれません。
実は伊藤先生には,『政治学の第一歩』執筆者の三人と一緒での座談会に参加していただきました。そのテキストがもうすぐ『書斎の窓』(+インターネット)に出ますので,よろしければそちらもご覧ください。

Presidents With Prime Ministers: Do Direct Elections Matter?

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