政治参加

それから,山田真裕先生に『政治参加と民主政治』を頂いておりました。ありがとうございます。このシリーズは全て著者の先生方の特色が出つつ,非常に広範なサーベイが行われている優れたものだと思いますが,この本もまさにそういう感じで,政治参加に関する幅広い論点が議論されています。とりわけ5章でのジェンダーエスノメソドロジーといった新しい論点について触れられていたのは非常に興味深く読みました。ジェンダーTwitterでのやり取りでヒートアップするところではありますが,そういう議論を横目にご覧になっている先生が,これまでに政治学を中心とした研究で分かっている ことを提示するというところもあるような気がします。
どうしても自分の関心と重ねて読んでしまうわけですが,本書でも指摘されているように,最近ではサーベイ実験などの方法論的な革新もあって,クライエンタリズムへの関心が(再び)高まっていることもあるので,それと政治参加の関係をどうとらえるのかということは重要な論点になると思います。僕は選挙制度を中心とした政治制度と公共政策という観点からクライエンタリズムの議論をすることになりますが,政治参加を研究されている方々から見るとこういう感じなんだな,と勉強になりました。
あと,1章で政治学者がなかなか取り上げないものとして議論されている社会運動論ですが,当たり前かもしれませんが,政治学者はアカウンタビリティみたいなものを見てしまうところがあるのではないかなあと思いました。どうしてもアドホックなものが多いですし,制度へのアンチテーゼというようなところもありますので,なかなかアカウンタビリティという観点からは分析しにくいわけですが。ただ,本書を読んでいると,伝統的な行政責任論で出てくるレスポンシビリティ(応答責任)の観点から社会運動を議論すると面白いのかも,と思います。最近,高橋百合子先生と粕谷裕子先生の『アカウンタビリティ改革の政治学』でもありましたが,制度外で政治家や政党のレスポンシビリティを追及して,その応答を求めることが,制度的なアカウンタビリティの代替(あるいは補完)になっているのではないかという社会アカウンタビリティの研究が行われているようで,そういう枠組みでの分析もあるかもしれないなあと。ただまあそういった分析に還元されないのが社会運動の面白いところなのかもしれませんが。

シリーズ日本の政治4 政治参加と民主政治

シリーズ日本の政治4 政治参加と民主政治

アカウンタビリティ改革の政治学

アカウンタビリティ改革の政治学

もうひとつ,これも政治参加に近い議論だと思いますが,田村哲樹先生と城下賢一先生から『リアル・デモクラシー』を頂いておりました。ありがとうございます。いわゆる55年体制が終わった後の「ポスト利益政治」を考えないといけない状況で,利益誘導とは違うかたちでの中間的な社会集団に立脚した民主政治を考える,という議論になるのだと思います。城下先生が分析されている農協のように,従来いわば利益誘導の受け手であった中間集団が,新しい民主政治の基盤になっておらず,期待されたNPOなどもまだ難しいということが議論されていると思いますが,そこではやはり田村先生が議論されているような「熟議」が問題になるんだろうなあと。ただ僕なんかは,各集団が少しずつ最大公約数的な「共通の利益」を見つけることが重要で,その鍵が政党(とプログラム)なのではないかと思うところで,「熟議」というのはその時どの範囲の合意形成にかかるんだろう,というのはちょっと気になりました。政党というかある社会的亀裂の中で熟議を通じて得られた合意があったとして,そこから先は政党間の熟議になるんだろうか,二つのレベルの熟議はお互いに掘り崩したりしないんだろうかとか。個人的には,一定の熟議が積み重ねられたうえで,ここから先は選挙しましょうか,というところがあっても良いように思うわけですが(その点では,やはり選挙制度の問題のような気がします),まあ全然ピント外れの話だったらすみません…。