最近の政治学教科書

この間いろいろといただきものがありました。年度の変わり目ということで,教科書が多かったと思います。
まず,出版社から『比較政治学の考え方』を頂いておりました。ありがとうございます。有斐閣ストゥディアシリーズの政治3冊目!ということです。内容は,どちらかというと新興国の比較政治研究を念頭において,内戦や政軍関係,民主主義の室,新自由主義といった一般的な政治学の教科書では扱いにくいようなものも含めて,説明されています。著者の先生方がみなさん比較政治と同時にそれぞれ専門として地域研究もされているという方々なので,事例も豊富で読んでいて面白い優れた教科書だと思います。本書を手にとってから外国研究・地域研究を行う学生・院生が増えると,地域研究のスタイルがずいぶん変わってくるのかもしれない,と思いました。

比較政治学の考え方 (有斐閣ストゥディア)

比較政治学の考え方 (有斐閣ストゥディア)

土倉莞爾先生から『現代政治の理論と動向』を頂きました。ありがとうございます。こちらは教科書ですが,市民社会や教育政策,福祉国家などといったトピックごとに各章が執筆されていて,「どちらかと言えば論文集のような書籍」となっているところがありますが,「各章で扱われているテーマに関する主要な理論や実際の動向を紹介し,現代政治の主要な制度やアクターについての理解を促すような記述を心がけた」ということです(いずれも「はしがき」)。各章をそれぞれの分野の入り口として読んで見るというのもいいのかもしれません。
現代政治の理論と動向

現代政治の理論と動向

森本哲郎・堤英敬・白崎護の各先生からは『現代日本の政治−持続と変化』を頂きました。ありがとうございます。こちらのほうは,この20年位で進展してきた政治学の理論的な発展を意識しながら,それを使って現代日本政治のさまざまなトピックを分析する,というスタイルです。対象は,政党,利益団体,市民運動,首相のリーダーシップ,官僚,選挙と投票行動,政策過程,国会,司法,地方政治,政治と情報,といったところ。司法として裁判所の独立性だけでなく,検察や弁護士も議論されているのは一つの特徴じゃないでしょうか。こういう「日本政治の教科書」って実はそれほど多くないような気がします。
現代日本の政治: 持続と変化

現代日本の政治: 持続と変化

木寺元先生からは『政治学入門』を頂きました。ありがとうございます。執筆者紹介を見ると,東大の総合文化研究科で内山融先生の指導を受けたみなさんを中心に書かれているような感じで,ちょっと懐かしかったです。選挙制度や投票行動,政党,議会,執政,公務員…などスタンダードなテーマを扱いつつ,各章のはじめにテーマに関連するいろいろな立場で「あなたならどうする」という問いが立てられていて,政治を自分の問題として考える仕掛けをしたうえで,それぞれのテーマについての解説がされていくという展開になっています。巻末に用語説明などもあって,初学者にも読みやすいものになっているといえるでしょう。用語説明は,『政治学の第一歩』でも見習いたいところだなあと思いました*1
政治学入門

政治学入門

というわけで,非常に多様な入門教科書が出ていた年度末でした。いろいろな入り方があるわけで,どうやって政治学を学び始めるか,というのも重要なトピックなのかもしれません。

*1:…まあ紙幅の問題もありますし,書き出すとまた長くなる可能性があるわけですが。