大震災復興過程の政策比較分析

御厨貴先生の編著(五百旗頭真先生監修)で『大震災復興過程の政策比較分析』という書籍が出版されることになりました。これは,五百旗頭真先生を研究代表者とした科学研究費補助金「関東、阪神・淡路、東日本の三大震災の復旧・復興過程に関する政治学的比較研究」の研究成果をまとめたものです。三つの大震災の1復旧・復興の政治過程,2政府と官僚の危機管理,3震災をめぐる社会認識について,分担して比較分析したものになっています。全てではありませんが多くの研究が三つの震災(少なくとも二つ)を扱っていて比較をしているというのはひとつの特徴ではないかという気がします。私もやったわけですが,三つを並べるのって結構難しいんですよね…しかも関東大震災は結構離れているわけだし。しかも今回難しかったのは,兵庫県人と防災未来センターにある公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(理事長は五百旗頭先生)のプロジェクトだったので,政策提言を強く求められたことでした。政策提言というと単に分析と違うわけで,何が妥当かは必ずしもはっきりしないという中である種の言い切りが求められてしまうので…。
私のほうは,それぞれの震災における住宅復興についてまとめたうえで,共通する問題点とそれを踏まえた政策提言という感じになっています。おそらく住宅政策について始めて書いたまとまったものになります。内容は,三震災のいずれも仮設住宅から恒久住宅へという流れの中で,従来の都市計画からはやや逸脱するかたちで「復興計画」が出てきてしまい,大量の住宅が建設されることになるわけですが,それがもたらす弊害(大量に作ろうとしてコストがかかる/供給を急いで将来の資産価値がないがしろにされがち)が大きいことを考えると,災害によって生じる実質的な再分配を平時からの家賃補助(と危険な家の撤去/空間管理)に転換していかなくてはいけないというような話です。まあ結局のところ,なんか「これだ!」みたいな話じゃなくて,普段から言ってることの延長線上にしかないような話ですが…。他の研究論文には興味深い比較が多いと思いますので,ご関心のかたはぜひお手に取っていただければと思います。