曽我謙悟先生から『現代日本の官僚制』を頂きました。ありがとうございます。あとがきにもあるように先に読ませていただいてはいたのですが,ちょっと入手に時間がかかってしまい,完成版は2月に入ってから読ませていただくことができました。内容については,山下ゆさんが素晴らしくまとめてくださっているので,そちらをご覧いただけるとよいのかなと思います。個人的には,やはりこれだけのデータを集めたうえで,演繹的な理論に基づいて官僚制を研究するということをここまでできるのか,と非常に驚いたところです。本書の議論に納得するかどうかは別としても,日本の行政がある固有のロジックで動いているというだけではない,ということを示(そうと)した本書は,ここから先行政を研究していくにあたっては,必ず参照されるべきものとなると思います。
理論もそうですが,このようにデータを集めて分析していくことで,「日本の行政に何ができるか」を改めて問うことができたのではないかと思います。それが分析に値する何かだという前提を置きながら日本の行政だけを分析していくと,どうしても優秀な日本の行政には何かができるはずだ,しかしそれがうまく作動しない何らかの原因(主に政治?)があるのではないかという主張や,あるいは,日本の行政はすでに時代遅れで何もできないはずだというような主張につながってしまうところがあると思います。それに対して本書では,他の国と比べて「何ができるのか」と問うていくことで,できていること・できていないことやその背景について分析していくことが可能になったのだと思います。
その中で重要なものは,8章のように,日本の行政が実際にどのような技能を持っているのか,持とうとしているのか,というようなことの分析ではないかと思います。本書では,政治任用の在り方や専門性について特に分析が行われ,いわば調整役として中立に徹することで組織の自律性を確保しようとしてるという指摘がなされています。だからこそ女性比率が低いことに象徴されるような代表制の低さにつながる(9章)という指摘も含めて,理論と国際比較に基づくからこその指摘ではないかと思います。本書でも,労働市場との関係が残された課題ということが示唆されていますが,政策云々ではなく労働者として何ができるか,何をしているのかという分析はいろいろ広がりうるので,政治による統制という無視できない前提を理解しながら,民間企業などとの比較も視野に入れつつ,特別な人が従事する特殊な労働ではない,普通の労働として行政の仕事をどのように評価できるのか,というのがこれからの重要な仕事なのではないかという印象を受けました。
- 作者: 曽我謙悟
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野田遊先生から『政策実施の理論と実像』を頂きました。同志社の政策系の方々を中心とした研究の成果のようです。以前の『ローカル・ガバメント論』に引き続いての成果ということになりますでしょうか。
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二〇一三年参院選 アベノミクス選挙:「衆参ねじれ」はいかに解消されたか (シリーズ・現代日本の選挙)
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ソ連という実験: 国家が管理する民主主義は可能か (筑摩選書)
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アメリカ大統領は分極化した議会で何ができるか (MINERVA人文・社会科学叢書)
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