入門 公共政策学

中央大学の秋吉貴雄先生から『入門 公共政策学』を頂きました。どうもありがとうございます。タイトルからわかるように,かなり教科書に近いスタイルの新書になっていると思います。各章で公共政策学の考え方を紹介しつつ,具体的な事例を用いてその考え方を当てはめるようなスタイルで進められています。それぞれの章で具体例となる政策を挙げられるのは,とてもわかりやすく勉強になりました。読みやすくされるために関連政策のリサーチをされるのは大変だったと思いますが…。特に一般医療品のネット販売の話は,政策決定のところということもあり,より突っ込んだ分析もぜひ知りたいと思いました。
個人的に,一番議論されていくべきだろうと感じたのは,最後の「合理的政策決定の呪縛からの解放」というところです。最近話題の『データ分析の力』を読んだのですが,この本では因果関係の議論が非常にクリアに説明されていると思いつつ,統計的因果推論だけで「合理的に」物事を決められないよなあという感想も同時に抱いていたところでした。単に外的妥当性の問題や議論が可能になるデータの制約というだけではなく,仮に期待される反応を最大にするような設計ではないとしても総合的に政策を議論する必要があるのではないかなあといいますか。もちろん,効果がないとか負の効果が出ているというのであればフィードバックされる必要はありますが。そのあたり,因果関係の議論を政策にどのように組み込んでいくかということを,より具体的にどう考えるかも「公共政策学」の今後の課題ということになるのかと思います。

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

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