『知性は死なない-平成の鬱を超えて』ほか

 

那覇潤先生から『知性は死なない-平成の鬱を超えて』を頂きました。與那覇先生とは、以前に東洋経済の連載でご一緒して以来ですが、最近少し体調を崩されているということを人づてにお聞きして心配しておりました。それで出版されてから電子版で拝読していたのですが、大学にもお送りいただいていたようです。本書はその体調を崩された原因-うつ病-についての闘病記でありつつ、大学や社会の問題について鋭く批評する作品となっています。とりわけご闘病のところについては、うつ病という病気について私自身がいくつか根本的な誤解をしていたと分かったことも含めて大変勉強になりました。
大学や学問について書かれていることも,当事者のひとりとして身につまされる思いを感じながら読みました。相対的に高齢の「進歩的な」教員についての見方は私も近い感覚を共有しているように思いますし,幸か不幸かたまにマスメディアで機会を頂いて「論壇ごっこ」をすることになっている人間の一人としては耳の痛いところもありました。
ただまあその耳の痛い話は,きっと「知性」を信じる與那覇さんの激励なんだろう,とも感じるところではあります。自分自身,力不足で専門をはみ出て社会において積極的に戦うような議論を展開するようなことはなかなかできませんが,他方で社会科学が専門化・先鋭化することに(こちらも力不足で)ついていけない感じがするときもあります。この数年は本を書いていたことが多く、論文を中心に書いていた時より読者個人にとって必ずしも「利得」にならないものをどうやって読んでもらうか,ということを悩みながらモノを書くことが増えましたし,逆に今カナダにいることもあって,もう英語だけ書くような方向もあるのではないかと考えることもあります。しかし(おそらくいずれにせよ),最終的には「知性」を信じてボチボチやるしかない,ということなのでしょうね。

知性は死なない 平成の鬱をこえて

知性は死なない 平成の鬱をこえて

 

京都大学の外山文子先生から『21世紀東南アジアの強権政治』を頂きました。どうもありがとうございます。数年前に共同研究でインドネシアの調査に行って以来、東南アジア政治には何となく関心を持ち続けているのですが体系的に勉強できているわけではなく、たなざらしの論文も2本ほど抱える状態が続いています…それはともかく、先日のアジア研究学会Association for Asian Studiesでも、Contemporary Populism in Southeast Asiaという同じような趣旨のパネルがあって参加してみたのですが、まあ基本的には試論的な議論が中心だったので、既に多くの論文を書かれている著者の皆さんであれば内容的にはきっと貢献できるのではないか という気がしました。

21世紀東南アジアの強権政治――「ストロングマン」時代の到来

21世紀東南アジアの強権政治――「ストロングマン」時代の到来

 

京都女子大学の松本充豊先生から『現代台湾の政治経済と中台関係』を頂きました。松本先生は中台協定の決定過程について分析されているということです。台湾の政治制度は日本と似ているところもあって(もちろん似ていないところもたくさんある)、比較対象として興味深く、松本先生とご一緒する科研費プロジェクトも動いていますので、この機会にぜひ勉強してみたいと思っています。 

現代台湾の政治経済と中台関係

現代台湾の政治経済と中台関係

 

成蹊大学の西山隆行先生から『アメリカ政治講義』を頂きました。以前の『移民大国アメリカ』 につづくちくま新書ですね。同時期に東京大学出版会からも『アメリカ政治入門』を出版されていて(こちらは教科書ですね)、同時期の校正は本当にご苦労されたのではないかと思います。 トランプ政権になってから、前にもまして「アメリカ政治を理解する」需要が高まっていることもあるような気がします。

アメリカ政治講義 (ちくま新書)

アメリカ政治講義 (ちくま新書)

 
アメリカ政治入門

アメリカ政治入門

 

  大阪市立大学の守矢健一先生から『ドイツ法入門』を頂きました。9版ってすごいですよね…。今のところ僕自身がドイツ法に触れる機会って、それこそ守矢先生を通じてくらいしかないのですが、政党政治選挙制度のあり方についてドイツの考え方が参考になるところは少なくないように思います。今回の改訂ではそのあたりも一部加えられたとお聞きしていますので、帰国後にぜひチェックしてみたいと思います。

ドイツ法入門 改訂第9版 (外国法入門双書)

ドイツ法入門 改訂第9版 (外国法入門双書)