最近のいただきもの

帰国してからはや一ヶ月。この一月はやたら長かったような気もしますが,ずいぶんと慣れてきたところでもあります。ただ二年間ほとんどなかった出張はなかなか慣れず…東京との往復の新幹線2時間半がなかなかつらいところ。前はもっと楽だったような気がするんですがやっぱり年か。

この間いくつか新刊を頂いておりました。まず龍谷大学松尾秀哉先生に『現代世界の陛下たち』をいただきました。どうもありがとうございます。この分野でまさに精力的にお仕事をされている君塚直隆先生をはじめとして各国の専門家のみなさんがそれぞれの国の君主制について寄稿されています。松尾先生はベルギーについて書かれていて,狭いながらも複数の民族が住み,非常に分裂的な連邦国家であるベルギーで,(特に言語問題が関わる状況でにおいて)国民統合の役割を果たす国王について論じられています。 

現代世界の陛下たち:デモクラシーと王室・皇室

現代世界の陛下たち:デモクラシーと王室・皇室

 

谷口将紀先生・ 水島治郎先生からは『ポピュリズムの本質』をいただきました。NIRA総研での研究プロジェクトの成果であり,現代ポピュリズムにはそれぞれの国に固有の要因がある一方で,共通の要因として人々の「政治的疎外」があるという主張がなされています。政治的疎外とは,自分たちのものであるはずの政治がいつの間にか自分たちでコントロールできなくなっているという感覚であり,この概念を鍵にイギリス・アメリカ・オランダ・フランス・ドイツの事例が論じられています。実は私も一度ご招待を受けて日本の話を少し研究会でご報告したことがありました(まあ私の話は政治的疎外に直接言及するようなものではありませんが)。 ポピュリズムと政治的疎外の関係を強調する本書の主張は,直観的にはそうだろうなあと思われるところですが,引き続きより精緻に実証研究が重ねられていくことになるんだと思います。

慶應義塾大学の山本龍彦先生からは『AIと憲法』をいただきました。政治的疎外を引き起こす原因のひとつとして,AIを含む技術の急激な進歩があるとされるわけですが,じゃあ具体的にAIがどのような憲法的問題を引き起こすのかということが,様々な分野で具体的に論じられています。その中には「AIと民主主義」「AIと選挙制度」という章もあり*1政治学者としてもAIの問題を考えなくてはいけないのだなあということを強く思わされます…。技術的なことがわかるわけではないので勉強,勉強…ですが。

AIと憲法

AIと憲法

 

御厨貴先生からは,『平成風雲録』をいただきました。ありがとうございます。折々に書かれた時評をまとめられてものですが,こうやってまとまって拝見すると,御厨先生のお仕事が,オーラルヒストリーを軸として,災害関係・天皇退位問題・公文書問題と最近の本当にホットな話題に直接連関しているんだなあと思うところです。いずれも問題が「炎上」する以前から,オーラルヒストリーの収集を通じて長期に渡る知見を蓄えておられるので,そのご意見は定点観測的な性格を持つものとして要請されているということかもしれません。 

平成風雲録 政治学者の時間旅行

平成風雲録 政治学者の時間旅行

 

*1:後者の方は,選挙制度自体について論じているというよりも選挙運動について論じている(フェイクニュースの影響とか)感じです。