政策過程を考える

ご紹介が遅れておりましたが,少し前に同志社大学の原田徹先生から『EUにおける政策過程と行政官僚制』を頂いておりました。どうもありがとうございます。本書は,タイトルの通りにEUの政策過程について歴史的制度論の観点から実証分析を行ったものです。EUというと「超国家組織」と理解されるように,しばしば国際政治の分析対象になるように思いますが,本書では行政学の観点からEUの政策過程が分析されています。EUにおいて主要な意思決定に関わってくるのはブリュッセルEU官僚であると言われていて,EU議会において各国の代表がアライアンスを作るのは難しいところがあるわけで,その意味では確かに「行政学」として非常に興味深い素材になるのだと思います(もちろんそういうかたちでの意思決定が「民主主義の赤字」Democratic Deficitとして批判されることも少なくないわけですが)。

実証分析としては,EUの政策の体系性を考慮してマクロ(欧州憲法条約)・メゾ(EU総合計画・政策評価等)・ミクロレベル(具体的な公共サービス供給)での政策過程の事例が扱われているほか,ヨーロッパの債務危機対応というミクロからメゾレベルへとかかわる意思決定が取り上げられています。興味深いのは,例えば曽我謙悟先生の『行政学』では,基本的に国際組織が国家を本人とした代理人として扱われているのに対して,本書のメゾ・ミクロの分析では「「官」にあたる欧州委員会は独自の選好を有する単独アクターとして扱うが,「政」である政治的アクターは未分化の相対として「官」である欧州委員会に対抗するアクターとして」(59-60頁)扱われているところです。本人の位置づけにあるアクターが特定の意思決定を図ろうとするのではなく,制約として機能するというアイディアということなのかなあ,として理解していたのですが,それは行政国家にも広く見られる事象のような気がします。EUでは本人の意思形成が難しいわけでより妥当なアイディアだろうと思うのですが,超国家組織の分析から国家の意思決定のある種の典型について含意が見られるとすると非常に興味深いように思います。 

EUにおける政策過程と行政官僚制 (ガバナンスと評価4)

EUにおける政策過程と行政官僚制 (ガバナンスと評価4)

 

 次に,秋吉貴雄先生,白崎護先生,梶原晶先生,京俊介先生,秦正樹先生から『よくわかる政治過程論』をいただきました。どうもありがとうございます。様々なトピックについてA4見開き1頁で解説していくスタイルの教科書で,政治過程についての様々なトピックが網羅されています。特に学生が辞書的な感じで必読の参考文献を探しつつ学習するスタイルに合うような気がします。 

よくわかる政治過程論 (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)
 

 最後に宍戸常寿先生から『憲法学読本』をいただきました。ありがとうございます。憲法の様々なトピックごとに解説していく教科書で,第三版ということだそうです(すごい)。どっちかというと人権・権利章典を中心とした構成になっていて統治機構はやや後景なのかな,という感じですが(財政・地方自治がひとつの章になっているのはご愛嬌かとw),政治学をやっている人間としてはそっちのほうもちゃんと勉強しないと,ということもあるでしょうから,勉強させていただきたいと思います。 

憲法学読本 第3版

憲法学読本 第3版