東南アジアにおける地方ガバナンスの計量分析

 晃洋書房から『東南アジアにおける地方ガバナンスの計量分析-タイ,フィリピン,インドネシアの地方エリートサーベイから』という本が出版されました。この中で,私も京都大学の岡本正明先生と共著で「インドネシア地方自治体における政治的リーダーシップ,地方官僚制,及び自治体パフォーマンス」という章を寄稿しています。

何でインドネシアの論文なんて書いてるんだ,と思われるかもしれません。本書のあとがきに結構詳しく書かれていますが*1,このプロジェクト自体は2005年くらいから大阪市立大学の永井史男先生が始められてまして,ちょうど10年ほど前,大阪市立大学に赴任した直後にお誘いを受けて科研に参加したのでした。ブログでもインドネシアの話がちょこちょこ出てきますが(インドネシアの地方自治とかインドネシアの地方自治2とか)それはだいたいこのプロジェクトがらみの話です。科研プロジェクトは,地域研究者(タイ・フィリピン・インドネシア)と政治学者・行政学者・社会学者の邂逅,みたいな感じで行われていて,特定地域について強みを持つ人たちは地域についての情報を整理・提供し,普段別の研究してる人たちはサーベイの手法やら理論研究やらを持ち寄って一緒に考える,というものでした。私は他の仕事が忙しくなったこともあり,2014年くらいからメンバーを外れていますが,プロジェクト自体はとても楽しかったですし,個人的にも学ぶところは非常に多くて,その後にもいろいろ影響を受けているように思います。

論文については,あんまり知らないところの話を,しかもサーベイを使って描くということで大変でしたが共著者の岡本先生に教えられながらなんとか書いた,って感じです。ざっくりですが序章でのまとめにあるように,「グッドガバナンスのような地方政府全体のパフォーマンスを考慮する場合に強力な政治的リーダーシップが重要になる傾向が存在する一方で,公衆衛生や教育のように官僚組織での調整を必要とする分野では官僚の自律性が大きな役割を果たすことが示唆された」ということを書いています。2013年初頭に国際シンポジウムをやったときに一応論文の原型(英語)ができていて,そのあと2015年の政治学会で日本語にしてしゃべったのかな。そのあと在外研究中に先行研究とか理論の部分をかなり変えて英文誌に投稿したものの,一回リジェクトでまあそうだよねー直さないと~と思ったものがそのままになっていたところ,昨年中に日本語の出版という話となって,リジェクトされたときに言われたことを修正して日本語にして出した,という感じです。また英語に戻して投稿するかというとなかなか微妙,ってところですが…。

東南アジアにおける地方ガバナンスの計量分析―タイ,フィリピン,インドネシアの地方エリートサーベイから( (シリーズ転換期の国際政治11)

東南アジアにおける地方ガバナンスの計量分析―タイ,フィリピン,インドネシアの地方エリートサーベイから( (シリーズ転換期の国際政治11)

 

*1:ちなみにこのあとがきはまあ長いんですが,一つのプロジェクトの誕生と展開の歴史,というのが語られていてなかなか面白いものではあります。