ダブル選挙雑感

2011年に続く2015年の大阪ダブル選挙は,前回と同様に大阪維新の会の勝利に終わった。まだ選挙区別のデータとかをちゃんと確認していないけど,現時点での雑感を簡単にメモ。
まず前回と比べて投票率は10ポイントくらい落ちているが,西成区を除くと得票比はあんまり変わらないように見える。不思議といえば不思議。維新にも反維新にも,有権者は同じくらい失望して同じくらいのひとたちが棄権したんだろうか。まあ集計データではわからないので,善教先生はじめサーベイとっている人の分析を期待したい。
あくまで集計ベースなので,雑なことしかわからないが,出口調査等によれば,大阪維新の会自民党の支持率はほぼ拮抗しているわけで,公明党民主党(連合)・共産党の票を積み増せば,基本的に自民党が支持する両氏が勝利するという予想がなりたつはずなのに,結果は維新の大勝となっている。
そうならなかったのは,まず無党派層の動向だろう。半分以上が大阪維新の会側に流れている。ただ大阪の場合,他の地域の「無党派層」の多くが維新だったりするので,もともとその残りの「無党派層」はどちらかといえばアンチ大阪維新の傾向があるように思う。2012年以降大阪維新の会が徐々に支持を剥落させて,支持層の一部が無党派層に戻っているような気がするので。それでも今回は大阪維新の会のほうが無党派層の支持を得ている。
次に,自民党支持層が大きく割れている。しばしば指摘されているのは,共産党との実質的な連合が有権者に受け入れられなかったということで,その可能性は否定できないが,ここのところはよくわからない。ダブル選挙で政党を選ぶ感じが強まったために,有権者は柳本−松井みたいな分割投票しにくかったように思うのだけど,それがあってるとすればまあ共産党自民党が組んでるように見えると有権者は選びにくい,という話かもしれない。ただ,そもそもここでいう「自民党支持」が地方における「自民党支持」をストレートに意味するのかわからない。安倍政権支持かつ維新支持,っていう人が自民党支持と答えているとすれば,もともとの(地方レベルの)政党支持の段階でかなりの大差がついていて,それがそのまま出てきたといえなくもない。
ツイッターでも書いたが,少し思ったのは大阪の政党間競争の構造が,国政同様の「一強多弱」っぽくなってるのかも,ということ。あくまで仮説なのでよくわからないけど,背景には大阪の選挙が小選挙区を基調にするようになっているのではないかと。市内で言えば国政の小選挙区・知事・市長に府議小選挙区なので*1。で,その時の問題は,市会の中選挙区制が「多弱」を作り出しているのではないかと。つまり「一強」に対して反対党が連合しないといけないのに,市会議員選挙で断片化を余儀なくされるのできちんと連合できないから,ある程度この構造が安定してしまうのではないかということ。ちょうど国政の衆院選で,小選挙区比例代表並立制の連動効果なんかがあって野党が断片化するのに似てる。
もともとの中選挙区制は,維新のような新規政党の参入を阻止する障壁になっていて,だからこそ僕なんかもよく中選挙区制を批判するんだけど,長のほう(+府議)を長く握られてしまうことによってその参入障壁という役割が変な逆機能を果たすことになるのかもしれない,と。小選挙区を基調にして長を握り続けることができれば,政権側としては議会の小政党を分断して各個撃破する,というのが基本戦略になると予想されるわけで,まあはじめは公明党というところなんだろう。なので,個人的にコメントを求められるときには,反対党を確立するためにも選挙制度改革を真面目に考える必要があるのではないか,と述べたところ(結局カットされたけど)。とはいえ雑駁に選挙制度を軸として,地方の中に別の政党システムが制度化されているとしたら非常に興味深い。