宣伝ですが一章寄稿した『統治のデザイン-日本の「憲法改正」を考えるために』(弘文堂)が出版されます。本書では,憲法学者と政治学者が共同して,人権について定めたいわゆる権利章典の部分を除いた統治機構に関連する,安全保障・代表・議会・内閣・司法・財政・地方自治という分野について検討するものです。分野によっては現行の日本国憲法で割と細かく書いてあるところもありますし,「代表」のように規定があんまりないところもありますが,どの分野でも政治学者の方が変更の論点を提示し,憲法学者がそれにツッコミを入れつつ変更可能性を考える,みたいな構成になっています。私自身は「地方自治」を担当しておりまして,中央地方関係・地方政治に中央地方をつなぐ政治のリンク,みたいな三題噺で書いてます。
個人的には駒村先生のまとめが特に興味深かったのですが(そこかい!),それは何というか憲法改正というテーマに対する憲法学者のアンビバレントな気持ち,みたいなのがよく表れているからのように思います。駒村先生ご自身は,私の印象では,他の参加者よりむしろ積極的に改正を議論したいという感じがあるのですが,それでも「憲法の外」に何かを求めようとするとやや躊躇もある,といいますか。「憲法を無視するわけにはいかず,やはり,憲法にしっかりしてもらわないとならないのである」(404頁)と。
実際他の憲法学者の皆さんにもそんな感じがあって,私などの場合だと,憲法によって改正される内容が現行憲法の観点から見て違憲かどうか,というのは実はあんまりちゃんと意識していないような気がします。そのときに憲法を変えようとする合意が何よりも重要で新しいモデルを作るような発想だ,と。しかしおそらく憲法学者の立場から見ると,憲法のある種の整合性(というかintegrity)それ自体は改正前後で変わるべきではないという発想が強いようにも思いました。そういう発想がわからないわけではない一方で,変更を「モデルチェンジ」と見る側から言うと,前のモデルから演繹的に導かれるような(いわばモデルよりも下位の)原則になぜ新しいモデルが掣肘されることになるのだ,という感覚も出てくるように思います。このあたりはどちらかの発想に決め打ちするべきではないと思いますが,何となくそういう違いが見えてくるのはグループでの共同研究の良いところかな,と思います。
なお政治の側の執筆者はみんな担当分野での関連研究があるということで,そちらもご紹介しておきます。
安全保障(楠綾子先生)
代表(大村華子先生)
議会(松浦淳介先生)
内閣(竹中治堅先生)
司法(浅羽祐樹先生)
財政(上川龍之進先生)
地方自治(砂原)