新訂 公共政策(+放送大学教科書)

宣伝ですが,大阪市立大学(4月から大阪公立大学)の手塚洋輔先生と共著で,『新訂 公共政策』を放送大学教育振興会から出版しました。二人とも大学では行政学を担当していて,いわゆる「公共政策論」については必ずしも専門というわけではありません。そのために,一般的な公共政策論の教科書よりもかなり政治学行政学っぽい感じになっているのではないかという気がします。基本的なコンセプトとしては,公共政策を社会と政府の資源交換のプロセスとして理解して,政府が社会から情報・金銭・人間・権限(社会から見れば自由)を調達した限りで使う,というところにあります*1。さらにそういうコンセプトともかかわりますが,結局政府が何かしたいと言っても,社会/人々が言うこと聞いて動いてくれないとなにもできない,ということで,公共政策の共同生産的な側面を強調している感じになってます。そのあたり,多少目新しいものになっているとよいのですが。

そういうわけで展開としても,普通は公共政策のインプットからアウトプット・アウトカムへと流れていくところが多いと思うのですが,まず社会との接点として情報・金銭・人間・権限の調達の話をして,そこから政府による公共政策の実現の話が続き,最後の公共政策の形成・意思決定の話がやってくる,という感じになっています。実現・形成のところについても,一般的にはカネとヒト,次に権限の話が多いわけですが,この教科書では他であまり触れられていない情報,そして専門知といったところがなるべく前に出てくるように構成しているつもりです。うまくいってるかは読んでいただいた方の評価にお任せいたしますが…。

私たちの「公共政策」は大学院向けのラジオ講義ですが,講義としては学部の方が多いのではないかと思います。その学部向けの『政治学入門』を待鳥聡史先生から頂きました。ありがとうございます。待鳥先生が全体の2/3くらいを書いていて,そこは比較政治学の観点から代表民主主義を扱い,現代日本政治を説明する,という感じでしょうか。残り1/3については山岡龍一先生が理論と思想,白鳥潤一郎先生が歴史のところを担当しています。待鳥先生が中心となって一貫した説明を行うとともに,思想や歴史のところは専門家が参加して補うバランスの良い教科書になっていると思います。

放送大学といえばテレビ講義なわけですが,テレビで行われる『現代の国際政治』を白鳥潤一郎先生から頂きました。ありがとうございます。ロシアがウクライナに侵攻して,日本にとっても脅威を感じるような中で,私たちにとっても国際政治が他人事とも言えなくなっているところがあります。しかしどうしても国際政治を理論だけで議論するのは難しいですし,他方で歴史を追っかけるということをしようと思っても作業が膨大過ぎてキツイ,というようなことも出てきます。本書は,前書きにも書いてありますが,その辺ちょうどよいバランスを実現しているような感じで,歴史的な経緯を学びつつ,現代のホットトピックについても学んでいくことができる教科書になっていると思いました。

*1:ていうか個人的には『政治学の第一歩』でぜんぜん「社会」が出てこない教科書を書いていたので,今度は社会ばっかり出てくる教科書かよ,という自己ツッコミがあったのですが(苦笑)。