在外研究でUBCに来てから始めたことのひとつに,住民投票の研究があります。ただまあ以前大阪都構想の研究をしてから一応興味があり,依頼を受けてこんな小文を書いてました。この中で,住民投票の類型として(1)国の法律で決められて法的拘束力を持つもの,(2)市町村合併,(3)迷惑施設をはじめ市町村の条例で行われるもの,という風に分けています*1。(1)については,憲法95条の規定のものはもうこの60年くらい行われておらず,あえて言えば大阪都構想に絡む大都市地域特別区設置法が近い?→これは書いてきた,ということで*2,残りの(2)と(3)について一本ずつ論文を書こうということで,依頼もあってとりあえず(3)として書いた論文が『公共選択』68号に掲載されました。(2)も大分前に書いていて,まだゲラ来てないのですが年内には出てほしいなあと。
住民投票に関心を持つようになったのは,地方レベルでの政党政治がうまく機能していない裏返しとして住民投票が求められるところがあるのではないか,と考えるようになったからです。今回の論文は(も),きちんと仮説を持ってきて検証するというよりも,住民投票に関するデータを集めてきて,どういうものが住民投票にかけられているか,とか,「拒否権」としてどういう場合に機能するのか,とかを議論する感じです。最近こういう探索的なのが多くて,それはそれで面白いんですがもう少しかっちりした仮説検証みたいなものもしたいと思ったり。主に対象になるのは2016年までに行われた37の住民投票(唯一の都道府県=沖縄県のものも含む)と,住民投票が直接請求がされても否決されたケースなど(こちらは必ずしも網羅的とは言えない)。まあまだケースも少ないので,これからどのくらい妥当性が維持されるのかはわかりませんが,投票率を従属変数として行った回帰分析によると,投票率が50%に行かないと開票しない,みたいな成立条件をつけると10%くらい投票率が下げるらしいということもわかりました。分析対象にした住民投票については,論文で一覧表にして主要な変数も載せているので,ご関心の向きにはご覧いただけると嬉しいです。
- 作者: 公共選択学会
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 2017/09/01
- メディア: 単行本
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