2011-01-01から1年間の記事一覧

今年の◯冊(2011年)

昨年,一部でちょっと好評を頂いた(ような気がする)ので,今年もやってみようかと思います。去年に続いて今年も,出版不況と言われつつも博士論文をもとにした著書というのは出版が続いています。主にそういった単著を,そしてあるいは初の単著というよう…

最近のいただきもの

中京大学の京俊介先生から,『著作権法改正の政治学』を頂きました。博士論文をずっと読ませていただいておりましたが,もう出版ですから素晴らしいものです。法と政治の交錯する分野,司法についての政治学的な分析というのは,日本の政治学ではなかなか行…

ダブル選挙についての3つの解釈

ダブル選挙のあとに,ちょっと研究者の間でFacebookで盛り上がったネタについて。橋下徹氏が明日から市長に就任される中で,「どのような支持があったのか」を考えることは,今後の市政を考えるにあたっても重要なところなのかな,と。 3つの解釈のうちひと…

「大阪都構想」が大阪の「地方政治」を超えるか

大阪府知事選挙・大阪市長選挙は,まあ事前にある程度予想されていたとおり,大阪維新の会がともに当選者を出すことになった。選挙については,何が争点なのかというところから始まって,橋下氏の政治手法について色々と議論もあり,考えさせられるところは…

『中国化する日本』

與那覇さんに頂いた本だが,これは非常に面白かった。部分部分については,専門家ではないので議論の実証的な妥当性については評価できないけれども*1,おもに「近世」から現代にかけての日本通史を,「中国化」「江戸時代化」というキーワードで整理し,現…

教科書+α

この間いくつか本をご恵贈いただいておりました。3つとも,「教科書」のような,でも今までの教科書とはちょっと違うところを目指しているような本ではないかと思います。 まず,ずいぶん遅くなってしまったのですが,伊藤修一郎先生から『政策リサーチ入門…

都制・特別市制−リバイバル

備忘のためですが,以下は大阪府地方自治研究会の名前で出された『都制か特別市制かの問題』という冊子に記載された,1950年の大阪都制論。戦前から続く大阪市による特別市制の導入という主張に対する反論として用意されたものらしい。しかし,もうびっくり…

体制維新

前回のエントリは今までだらだらとブログを書いてきた中では圧倒的なアクセスを頂きました。はてなってブックマークによって読まれてる記事にポジティブ・フィードバックがかかるしくみになってるんですね。今回は前回の補足のような話。まあセンシティブな…

大阪都構想のふたつの哲学

大阪都構想については,どちらかというと批判的な観点から,さまざまな検証がされてきた。正面から「都構想賛成」みたいな話をしているのは,上山信一氏の『大阪維新』くらいで,残りの本はほとんど全部批判というか。ただ,そうは言っても,反対派の急先鋒…

ダブル選世論調査

11月27日に行われることは決まった大阪府知事・大阪市長の選挙ですが,ボチボチ世論調査の結果が上がって来ました.今日は朝日と読売の結果が出ていましたが,なかなか興味深いところ.そもそもこの選挙自体,橋下・平松両氏のこれまでの成果を回顧的retrosp…

制度発展と政策アイディア

立命館大学の佐々田博教先生から頂きました。どうもありがとうございます。頂いてちょっと読み始めたら,文章も読みやすくて面白かったので,最後まで読ませて頂きました。 議論されている内容は,日本の開発主義的な体制・制度というものがどのような起源を…

財政調整制度下の地方財政

西川雅史先生の新著。やっと時間がとれたので,まとめて読んでみた。基本的にこれまでに書かれてきた論文を再構成して本にしたという感じで,保険料/保険税の選択とか以前に興味深く読んだものをもう一度読み直すことができた。 内容は,マクロの地方財政制…

新自由主義と政治(つづき)

またもやフリードマンの議論から.まあ前の続きなわけだが.しかし最近こういう書き方でしかブログを更新できないのは情けないな.ちょっとまとまってものを考える時間を取らないと. 政府の施策が持つ重大な欠陥は,公共の利益と称するものを追求するために…

新自由主義と政治

言わずと知れたミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』.しばしば,彼の「新自由主義」のイデオロギーを信奉する人たちにとっては聖典のようなものだとして扱われる.しかし,改めて読んでみると,その中に政治についての興味深い一節がある.ちょっと…

民主党の組織と政策 ほか

堤英敬先生,森道哉先生,濱本真輔先生から『民主党の組織と政策−結党から政権交代まで』をいただきました.ありがとうございます. よく考えたら,これまで研究者の手による民主党研究ってほとんど出てなかったんですよねー.この前の政権交代選挙を中心に…

民主党政権への伏流

政治家だけではなく,いわば「裏方」として初期の民主党に至る道筋をつけてきた人たちを追っているということで,読むまでに知らなかった人たちの話も多い.断片的に読んでいたので,読み終わるまでにえらく時間がかかってしまったが,これは非常に面白かっ…

「フクシマ」論

というわけで,「フクシマ」論について。他のところの評価でも出ているところだが,歴史や地元の様子をしつこく書いてる3章・4章が読ませるし,非常に興味深かった。逆に言うと,5章・6章がやや残念というか,微妙な一般化っぽい議論が乱暴な感じがする。地…

長の兼職

『「フクシマ」論』を興味深く読んでいるのだが(この本についてはまた機会があれば別に書きたい),その中でちょっと気になる一節が出てきて,思わず調べてしまった。 それは,この混乱の背景に,辞職した初代知事である木幡が,当時兼職が禁止されていなか…

戦争指導と政党政治

以前から政治史ものを読むのがほとんど趣味のようにやってきたが(書いて貢献できないし),最近は学部1年生のゼミで『失敗の本質』を読んだこともあって,電車の中の読書は戦前の政治,とりわけ戦争関係のものが多い。特に,比較的年齢の近いお二人の書いた…

長の任期

大阪維新の会の政治資金パーティでの,橋下知事の「今の日本の政治で一番重要なのは独裁」みたいな発言が物議を醸しているけれども,最近はどうも知事が激しいことを言う→マスコミが喜ぶ→学者・評論家が批判する(煽る)といったようなサイクルができてる感…

人事いろいろ

電車の中で読むように,なんとなく『東電帝国−その失敗の本質』を買って,あんまり期待せずに読み始めてみたのだけども,これは結構面白かった。ところどころで筆者の自慢話みたいなのが出てくるのはまあちょっとご愛嬌だが。面白いと思ったのは,たぶんあん…

政府与党一元化

『ゼミナール現代日本政治』,というか『政権交代の600日』を読んでいたら,ここ数年の微妙な疑問に答えが書いてあったので。ちょっと長いですが,以下125頁から引用。ゼミナール 現代日本政治作者: 佐々木毅,清水真人出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発…

失敗の本質−メモ

ご多分にもれず,一年生のゼミで『失敗の本質』を読んでるわけですが,久しぶりに読み返すとやはりふつうに面白い。失敗例だけから教訓を引き出すってどないやねん,と思ったりもするが,失敗から帰納的に一般論を形成する技量というか,解釈の力は却って引…

議員定数削減

大阪府議会では,大阪維新の会の主導で,109あった議席を88に削減したとのこと。産経新聞では,「既存政党「数の横暴だ」「情けない」」という記事が出ていますが,これにあるとおり,21という約2割に当たる議席を削減するということで,それに反対して自然…

本を生み出す力

これは面白かった。この本で議論されているような話は,常に断片的に耳にしているし,僕自身が事例研究の対象のひとつである有斐閣から本を出していただいていること,またしばしば言及される社会学の研究者や本についてそこそこディレッタント的な知識があ…

若き実力者たち

沢木耕太郎のデビュー直後のルポ(っていうのかな?)の新装版が出ていたので,何となく購入。単行本としてははじめてのものだったらしい。何より驚くのは,25歳のときに,周辺取材も含めてこれだけの人たちにインタビューして,毎月一本いわば簡易ライフヒ…

首長たちの革命

何となく本屋で目にして,著者の前著*1が興味深かったこともあり,『首長たちの革命』を読んでみた。この本は,主に河村たかし,竹原信一という二人の地方自治を賑わす市長に焦点を当て,関係者へのインタビューをもとに人物像を描き出すというものになって…

統一地方選挙・後半戦

ざっくりと思いついたこと,というかTwitterに書いたことのまとめだが。 市議選については,これだけ有権者と候補者個人が離れつつあって,しかも事前運動や選挙運動の規制で候補者個人からアピールすることが難しい中では,もはや50人から40人を選ぶ,みた…

3月−4月に頂いた本

新学期の準備や自分の著書の関係で,この間慌ただしくしていたために,なかなか頂いていた本の紹介ができませんでした。3月から4月にかけて,ふだんよりも結構たくさんの本を頂戴しておりました。昨年の終わりにも書きましたが,出版不況と言われているにも…

統一地方選挙雑感

考えるべきことはいろいろあるが,とりあえず終わった直後に感じたことをいくつか。 大阪の選挙については,橋下知事が率いる大阪維新の会が府議選で過半数を取り,市議選で33議席と躍進した。開票直前にいくつか否定的な情報を聞いてしまったので少し混乱し…