電車の中で読むように,なんとなく『東電帝国−その失敗の本質』を買って,あんまり期待せずに読み始めてみたのだけども,これは結構面白かった。ところどころで筆者の自慢話みたいなのが出てくるのはまあちょっとご愛嬌だが。面白いと思ったのは,たぶんあんまり知らなかった分野で,でも戦後政治史的に知っている実名がバンバン出てくるような,いわば東電の社長−とりわけ木川田一隆−を中心とした戦後政治史のサイドストーリーのようなところがあったからだと思う。特に,東電が大口の政治資金提供者だったことがあって,政治家に対する企業の支援のような話が頻繁に出てくるのが面白い。例えば,146-151頁では,1974年の参議院選挙で,企業ぐるみで全国区候補の応援があった,という話が出ているわけだが,個別企業と候補者の関係がストレートに説明されるのはなかなか珍しいのではないか(まあその元ネタは新聞であるけれども)。もちろん,全国区の候補者がはじめから後援企業を持ってるということも難しいところがあるわけで,特に伝統ある企業が支援しているとなれば,その候補者を擁立する派閥との関係というのが容易に推測できる。その辺り,東電−経団連を軸として,個別企業と政治家の関係を考えるひとつの手がかりになるのかもしれない。
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