仕事納め

カナダに在外研究に行った2016年までは、毎年、年末の最後に「今年の〇冊」として主に博士論文をもとにした書籍の紹介をしてたけど、そのあとは「年の瀬」というタイトルで適当なことを書いていた、つもりだった。というわけで、今年も書こうかなあと思って去年のタイトルを見たら「仕事納め」で、実は2つのタイトルが行ったり来たりしていた、というとてもどうでもいいことに気が付いてしまった…。

まあそれは良いのですが、今年もだいたい仕事納めになりました。最後のほうは後述する翻訳仕事でいろいろなことを放り出してしまったので、まだやるべきこともちょっと残ってますが。今年は全体的にこれまでと違うことができたり、あまりなかったことが起きたりと、ちょっとした転換があったような気がします。

これまでと違うこと、というのは何よりも5月頃からテニスを再開したことで、途中肉離れしたりしたこともありましたが、少しずつ勘が戻ってきて、何よりの気分転換、というか、これがなかったらいろいろ続かなかったのではないか、という気がします。あとは、ようやく英語論文を書けるようになってきた、ということで、昔から読んできた雑誌のひとつであるAsian Surveyで出版してもらうことができました。さらに、12月にはAsian Association for Public Administrationという行政学の学会で論文を発表して、Best Paper Awardをいただくこともできました。こちらのほうはこれから投稿ですが、せっかくなのでうまくいって欲しいと祈るばかりです。他方で、これまであまりなかったこととしては、大学院の指導教員であった山本泰先生を含め、身近な、お世話になってきた方々が何人か亡くなることがあり、ショックを受けるとともに、年齢についても意識するようになった気がします。

仕事としては、朝日新聞の論壇委員や東洋経済の書評など、とにかくインプットしてそれを整理してアウトプットする、という何というか、「鵜飼いの鵜」(すみません)のような感じでの仕事が続き、常に追い立てられていたところがあるので、やや雑になった面があることを反省しています。書いたもの、発表したものとしては、前述の英語論文2つのほか、初めて「編者」という仕事をした、『世の中を知る、考える、変えていく』があり、その他は、『都市計画』『中央公論』などに短めのエッセイを載せてもらった、という感じでしょうか。

去年と比べると仕事量も生産性も落ちたように思いますが、それでも常に追い立てられている忙しい感じがしていたのは、論壇委員や書評の仕事のほかに、2つほどかなり時間がとられる仕事があったからのように思います。1つは、イギリスの研究者との共同研究で、昨年の夏から始めている毎月のオンライン・サーベイの仕事です。共同研究は本当に勉強になっていて、サーベイも興味深いデータを収集できているようには思いますが、準備や打ち合わせはなかなか大変で、特にこれからは集めたデータを分析して論文を書く内容が増えてきます。そのためのワークショップを1月に行う予定ですが、そういったものの調整にもどうしても時間や気力を使うことも大きかった気がします。そしてもうひとつは、柄にもなく、僕でいいのかという気はしますが、翻訳の仕事をしてました。一応「監訳」ということなんですが、それがどれだけ「監」なのかわからないままに秋以降のかなりの時間を使うことになりました。一応「仕事納め」の前に一通り作ることができました(なのでこれ書いてます)が、少なくとも内容については素晴らしい本なので、このまま無事に出版できればと思っています。

この数年は、年末に印象に残った本を一冊挙げてますが、今年はあんまり何も考えずに選ぶとその翻訳している本になりそうなんですが、それ以外だと、(2022年に出版された本ですが)『モチベーションの心理学』が勉強になりました。もともと、大学院生の論文指導のために勉強しようと思って買ったんですが、自分自身にもとても勉強になるもので、AAPAの論文を書く時にも改めて本書から勉強させてもらいました。日本では、経営学とかでモチベーションについて踏み込んだ研究は行われているようですが、行政学のほうではPublic Service Motivationへの関心が高まりつつあるくらいで、より踏み込んだモチベーションの研究はこれからのように思います。そんな、行政や政府で働く人のモチベーションを考えるときにも、とても有用な本だと思いました。