仕事納め

今日は学部で取れる人は有休をとるということで,実質的に昨日の授業で今年の仕事納め的な。今年は昨年に続いて管理業務を中心によく仕事をしたのではないかと思う。一応2つの学会事務局は大過なく引き継ぐことができ,教務委員長仕事も(こちらはバタバタとしているものの)来年度の授業計画がほぼ揃ってきたので,3月の終わりがようやく見えてきた。管理業務にめどがついてきた一方で,今年はいわゆる社会貢献的な業務が増えてきたような感じ。役所・民間を通じた審議会や研究会・勉強会などが多くなってきていて,色々難しさを感じることが少なくない一方で,できることがあればお手伝いをしたいと感じることも多い。ただこちらも割と重いのがあるのでもう増やせないけど。なんか12月に入ってからあんま元気なくていつの間にか12月が終わってしまった感じだし。

研究のほうでは,今年の前半,5月ころまでは単著の執筆・調整に可処分時間のかなりの部分を取られたほか,4月以降からイギリス国際共同研究が本格化してきたのが大きい。国際共同研究プロジェクトをあまりやったことがないのにマネジメント業務を仰せつかっていて,正直大変だけれどもコミュニケーションもふくめて勉強になる。10月には友人がエクアドルから来ていて関連の手続きやイベントなども増え,これまでになく英語を使う年になった。と言いつつ,英語で論文を書く時間はなかなか取れず,単著のほかは6月ころに『公共政策研究』への論文,8月に科研プロジェクトの論文を書いたというくらいが主な研究活動で,その他は割と長めのエッセイを『地方自治』『地域開発』『すまいろん』『UP』に書いたという感じ。著書は2019年の年末あたりにもうちょっと書いてまとめたい,と書いているわけだけど,そこからコロナ禍への突入もあり,結局3年弱かかったことになる。ただ一応これまでの研究に一つの区切りをつけることができたという感覚はあるので,来年は気持ちを切り替えて新しい研究に取り組みたいところ。なおその単著をはじめ,今年出版した書籍は以下の通り。

今年印象に残った本,というのを考えると,このブログで紹介してきた本をはじめいろいろ多かったのですが,新書で印象に残るものが多かったように思います。一冊というと難しいですが,最近牧原出先生に頂いた『田中耕太郎』は非常に面白かったです。対象となっている田中氏について一般的な知識しかもっていなかったのですが,さまざまな組織の中で中核的な役割を担いながらその組織を運営していく思想や方法が一貫して描かれているとても優れた評伝です。あとがきでも書かれているのですが,高い独立性が持った個人がいかに制度を運営させていくか,作動させていくかということを考えるときに非常に大きな手掛かりになるのではないかと感じました。個人的にも,最近ガバナンスやマネジメントといった概念に改めて関心を持つようになっているのですが,田中氏が文部大臣や最高裁長官として,一定の独立性・自律性を持つマネジメントを行おうとしているというのは,最近の日本ではあまり見ることができないタイプのマネジメントではないかと思います。その点で,「田中が忘れられていることに,日本社会で独立性を問い直す力の貧弱さが見て取れるともいえる」(283頁)というのは本当にその通りで,商法や国際法といった田中氏が直接専門としていた分野からではなく,行政学の観点からでないとこれを浮き彫りにできないことが非常に説得的であったのではないかと思うところです。