感染症危機管理

まだまだ暑いのにもう10月…授業が始まる…という時期になってきました。やや現実を直視できない感じですが、この間に新型コロナ関係でいくつかのご著書をいただきました。

まず東京大学の牧原出先生から、『きしむ政治と科学』をいただきました。ありがとうございます。牧原先生は、初期から専門家と政府の関係についての論考を重ねてきて、専門家が「前のめり」になっているという表現をおそらく初めて使った研究者でもあります。本書は、これまでに雑誌『中央公論』で発表されてきた尾身茂先生へのインタビューをまとめられたもので、この間の感染症対策に尽力されてきた「専門家」の立場から、その困難さ、とりわけ政府、そして一般の人々とのコミュニケーションの難しさについて語っておられるのが印象に残ります。尾身先生は、おそらく自覚的に、必ずしも権限規定がされていない立場にありつつも、リーダーシップを執られていたところがあって、それは全体としてみると幸運であったことだと思いますが、反対に、そこで何ができていなかったのか、ということを考えるためにも重要な記録になると思います。(僕はまだ読んでませんが)ご本人の記録である、『1100日間の葛藤』と合わせて読まれるべきなのかな、と思います。

より直接的に状況の管理、というと法的資源による管理が重要になると思いますが、この間の法的な対応についてまとめられたものである『パンデミック行政法』を明治大学の木村俊介先生から頂きました。どうもありがとうございます。今回の重要な法的資源となった新型インフルエンザ特措法が個別法であるということに注目して、個別法によるその対応の特徴と、個別法としての特徴について重点的に議論されたものになっています。木村先生ご自身がもともと自治省総務省で勤務されていたこともあり、今回大きく問題になった国と地方と関係についても、特に実施のところを意識しながら書かれているように思いました。このあたりは地方制度調査会などでもまさに焦点になっているところであり、きちんと勉強したいというところです。