いただいた教科書

新学期、なんとなく滑り出しは良い感じがするけど、何気に論文の締め切りがいくつか入っていて怖い…ちゃんとできるのだろうか。で、新学期だからってわけでもないのですが、最近いただいた教科書をご紹介します。

まず同僚の興津征雄先生から『行政法Ⅰ』をいただきました。単著の教科書というのは本当に大変そうで、政治学系では最近はほとんど共著のような気がします。そんな中で本書は800ページを超える大著を一人で書かれたもので、さらに行政法Ⅱも続くことを予定されている、というすごいもの。ツイッター見てる限りで評判も売れ行きも上々みたいで素晴らしいことです。

僕自身は行政法は素人ですので、何か関係することが出てきた場合に辞書みたいに利用させてもらうことになりそうですが、さしあたり関心があってみてみよう、と思った項目があります。それは「公定力」だったのですが、そうなんじゃないかなあ、と疑問だったことが非常に明確に書かれていて個人的にはそうだ!と思いました(こなみかん)。

筆者は、<行政処分はたとえ違法でも取り消されるまでは有効である>という法現象を説明するのに、公定力という概念を用いる必要はなく、この概念は行政法の教科書から消去されるべきだと考えている。その理由を説明する。(以下略)

実は以前に博士論文を書いたときに、「現状維持」と「公益」という問題について考えていたことがありました。ざっくりいうと、「公益」の中身を確定することが難しい中で、以前に行われた決定が持続する「現状維持」が暫定的な「公益」を表す性格を持つことになり、長や議会がそれぞれに考える新たな「公益」に基づいた提案が新たに可決されることになると「現状維持」が更新されていく、みたいなことを考えていたわけです。で、論文書いた後に、こういうのをもう少し深めることができないかと思って、ちょいちょい「公定力」に関する論文や本を読もうと思ってたんですよね。でもまあここに書いているように、行政法の文脈から言えばまあピント外れな話なわけですから、正直混乱してすぐにやめた記憶があります。というか、まあ客観的に見れば自分がわからないことを棚に上げてなんでこんな概念使ってるんだろう、と酸っぱい葡萄風のことを思ってたわけですが(苦笑)。

もちろん全部読めてるわけではありませんが、他のところを見ても、抽象的な概念からだんだん具体的な話が出てくる構成の中で、「行政法学」を限定的にとらえるのではなくて、行論に合わせて関連する話題を含めて割と幅広に、体系的に説明しようとされているように見えました。いやまあ他のテキストそんな読んでないのでわかんないんですが、そういう作りのほうが、専門外の人間からはわかりやすそうな気もします。

著者のみなさんから『政治学入門 第3版』をいただいておりました。コロナ禍での様々な事象を踏まえてアップデートされた、ということです。本当に迅速なアップデートですし、それにしても第3版も出るのはすごいことです。自分がかかわっている教科書(『政治学の第一歩』)も5年ごとというならそろそろ第3版も…というところなのかもしれませんがどうなることやら…。

大東文化大学の小林大祐先生から、『都市政治論』をいただいておりました。ありがとうござます。伝統的な都市政治のトピックから、コロナ禍を経て現在の論点として都市と関連するグローバリゼーション・ダイバーシティ・貧困などにも目配りがあって良い教科書だと思います。以前も似たようなこと書いた記憶がありますが、地方自治とか都市政治の教科書って最近すごい多様化してますよね。私自身もぜひ勉強させていただきたいと思います。