いただきもの

気がついたらもう12月も半ばを過ぎ…と、最近はすぐに時間が経って驚きます。単なる老化っていうことなのかもしれませんが。この間もいくつか書籍をいただいておりました。まず、東京大学の鄭黄燕先生から、『都市化の中国政治』をいただきました。どうもありがとうございます。博士論文をもとにした書籍で、都市と農村に分断されていた中国社会が、発展とともにその境界線があいまいになり、土地利用を軸に変化していく様子を描いた研究です。都市が拡大していくにつれて、事業や住宅のための用地として土地が必要になり、もともと農村とされていた地域の土地を利用することになるわけですが、周辺化されてきた農村から見ると、開発利益を得る機会でもあります。その開発利益をめぐって、都市-農村間、そして農村内での対立が生まれます。そこで描き出されるのは、農村の都市化が進む中で、都市・農村の様々なアクターが対立と協調を繰り広げることです。とりわけ注目されているのが、都市と農村との関係によって、廃止されることも維持されることもあるものの、維持された場合には農民の住民組織であるとともに、都市の代理人的な役割を果たすという複雑な村民委員会です。曖昧な村民委員会をはじめとして、必ずしも統一的なルールによらずにアドホックに問題を解決しようとすることが、都市と農村の間の中間地帯を作り出しているという議論は、本来あいまいで混沌としたものである「都市化」それ自体を思い出させる、興味深いものだと感じます。

亜細亜大学の川中豪先生からは、『第三の波』の新訳をいただきました。どうもありがとうございます。翻訳にあたっては、旧訳があるものの、引っ張られないように封印して進められていた、ということをお聞きしました。僕も最近ちょっとだけ翻訳関係の仕事をしているのですが、すぐに何か日本語に頼りたくなってしまうばかりなので、見習わなくては…。だいぶ前にちょっと読んだことがあるはずなのですが、細かいところはすっかり忘れているので、また読み返して勉強させていただきたいと思います。

関西大学の坂本治也先生から、『日本の寄付を科学する』をいただきました。ありがとうございます。寄付に関連するさまさまな研究をされている方々を集めて編集された論文集ですが、寄付をこのように包括的に検討したものは、これまでにほとんどなかったのではないかと思います(少なくとも日本では)。自分自身も、カナダの在外研究から帰ってから結構寄付を行うようになっていると思うのですが、「スポーツイベントで寄付は促進されるのか」を分析した本書の11章を拝読していて、よく考えるとそのきっかけは、バンクーバーのChildren’s hospitalのチャリティーランに出ていたことがあるかもしれない、と思ったりしました。他の章も面白く読みましたが、たまに行政学の授業で紹介したりもするので、ファンドレイジング活動の分析とか増えていくと良いなあと思うところです。

國學院大學の羅芝賢先生と東京大学前田健太郎先生から、『権力を読み解く政治学』をいただきました。ありがとうございます。これは教科書なのですが、読み物としても非常に面白くて、結構一気に読んでしまえます。構成・内容ともに、最近の政治学の教科書の中でも特徴的と言える非常に興味深いもので、特に前半で羅さんが書いている国家論的なところ読み応えがありました。本書にも書かれてますが、マルクスの話を最近の教科書でがっつり触れているのは珍しいと思いますし、マルクスの説明をしつつ、ウェーバーの議論が単純な発展段階論ではない、というのはちょうど直前に読んでいた佐藤俊樹先生の『社会学の新地平』を思い起こさせるものがありました。前田さんが書いている後半は、割とスタンダードなトピックが並んでいると思いますが、多元主義(というか政党政治?)に対する微妙な距離感が面白いと思いました。自分たちが書いている教科書(政治学の第一歩)では、多元的であることを非常に重視しているところがありますが、それが重要であるとしつつもすべてではないというニュアンスで丁寧に書かれていたように思います。

またありがたいことに、終章では、我々の教科書について特に取り上げていただいています。個人的に嬉しかったのは、自分たちではたぶん常に「自由主義者」であることを考えて教科書を書いていたつもりなのですが、しばしば「合理主義者」とか「利己主義者」というところが強調されがちなところ、評価として「自由主義的」であることが特徴としていただいた点ですね。内容的にも、私たちの教科書で十分に触れられていなかったところがむしろメインになっていて、もちろん理解の仕方に違うところはあるわけですが、相補的なものとして読んでもらえると嬉しいです。