教科書(ストゥディアと計量・ゲーム)

年度末は割と教科書が出版されることが多いと思うのですが、いくつかいただいたものがありますのでご紹介したいと思います。まず有斐閣ストゥディアシリーズから3冊あるのですが、『日本政治の第一歩[新版]』を同僚の藤村先生、それから上神・遠藤・鹿毛・濱本の各先生から頂きました。どうもありがとうございます。本書は主に日本の国内政治を対象に、多くの研究を生み出している執筆者のみなさんが、各章のトピックについて一般的・理論的な説明から始め、日本政治をどのように理解していいかを説明していきます。2018年に出版されたものの新版になるわけですが、そのあとの日本政治のトピックとして、女性やジェンダーに対する関心の高まり、インターネットの影響力の向上、首相官邸への権力集中などが生じていることに配慮がなされます。政治学の一般的な教科書は、日本政治を例に出しつつもあんまり詳細まで説明するわけではないことが多いですが、本書は政治学の研究を基礎に日本政治を説明する形になっているので、今日的な問題が政治学でどう議論されているかを見るショーケースとしても便利なものになっているのではないかと思います。

慶応大学の岡山裕先生から『アメリカ政治』をいただきました。ありがとうございます。日本政治と違ってなかなかわからないことも多いわけですから、本書でははじめのほうで歴史やアメリカ人の政治観・政党観など前提になるところを説明したうえで、さまざまな制度やアクターの説明が続いていきます。実は各章で取り上げられているテーマが『日本政治の第一歩』と似てたりするのですが、本書のほうは「政党」が「選挙」より先に来ること、メディアが議会や官僚制より前に来ること、そして司法府が入ってくることが大きな違いのように思います。中身も含めて2つの教科書を比較しながら読んでみるというのも面白かったりするかもしれません(1つの授業でやるのはきつそうですが…)。

さらに著者のみなさまから『政治学入門』をいただきました。ありがとうございます。僕自身『政治学の第一歩』を同じストゥディアレーベルから出してて、どっちが先なん?という気がしなくはないですが(苦笑)、著者のみなさんの問題意識としては、最近の教科書が少しずつ難化していて、たとえば「再分配」とか「イデオロギー」のような基本的な言葉が十分説明されていないのではないか、また最近の研究を紹介することが多くなっていて逆に紹介されていない基本的知識が多いのではないか、というものがあります。なので、テクニカルな話よりも政治学で用いられるコンセプトや歴史を説明し、他の教科書につなげていきたいと。最終章で政治学について論じられている中で、制度の背景にはそれを支える思想があり、それを理解するのが重要だ、というのがあるのですが、本当にその通りだと思います*1。また、各章末に関係する映画が紹介されているというのも興味深いもので、個人的にもたまに映像資料紹介したいんですが多すぎてよくわからないんですよね…こういうの紹介する、という例としても参考になりそうに思います。

もうひとつ有斐閣の教科書ですが、著者の先生方から『データ分析をマスターする12のレッスン[新版]』をいただいておりました。ありがとうございます。最近自分の政治データ分析では『Rによる計量政治学』をずっと使っているのですが、いつも迷うのが本書です(ていうか二年前までは後半は本書でしたが)。直感的にわかりやすい説明が展開されているのと、本書でのデータの見方の説明が結構好きなんですよね。他方、仮説検定の説明とかはややざっくりで、おそらく説明としてはそれでいいんじゃないかと思うものの、僕みたいにあんま自信ない人にはちょっと怖いというか。今回は構成を変えたりパネルデータの分析を追加されているということで、また授業のほうでも使わせてもらいたいと思ってます。

その『Rによる計量政治学』の著者でもある高知工科大学の矢内勇生先生に『Rで学ぶゲーム理論』をいただきました。ゲーム理論の入門といえば戦略型とか展開型があって…いろいろ場合分けして…っていうイメージで、Rで学ぶってどういうことなんやろ?と思ったんですが、rgamerというRのパッケージを自作されていて、単純にゲームを解くだけでなく、シミュレーションも含めて可視化もできるようにしてるというすごいものでした!素人目にも本当にすごい学び方の革新だと思います。個人的には昨年まで仕事でやってたマッチングとか使ってみたいところです。

 

*1:個人的には、特に制度の手続きや細部を考える時にこそその思想が重要になるように思います。