最近の教科書

いろいろ教科書・体系書をいただいておりました。ありがとうございます。まず立教大学の原田久先生から,『行政学[第2版]』をいただきました。トピックや事例をクローズアップしながら行政の制度や政策について勉強するという特徴を持った教科書です。以前のものを改定した第二販ということになりますが,お忙しい中でかなりの部分を書きおろしで更新して第二版を出されるというのは大変なご苦労があったかと思います。第8章の「情報資源管理論」は統計を扱っているところ,私自身も最近関心を持って研究しているところなわけですが,統計に関する制度についてまとめて扱っている行政学の教科書は少なく,この教科書の特徴の一つだと思います。個人的には,第三部の政策論のところ,理論的な話の中で具体的な検証事例として授業などでも使いやすいと感じました。

著者のみなさまから,『テキストブック地方自治の論点』をいただきました。ありがとうございます。従来の地方自治の教科書ではちょっと落とされがちの公営企業や公民連携,住民投票といったところにそれぞれ一章が割かれていて,自分自身最近はこのあたりに関心を持っているところで興味深く拝読しました。自分の授業ではこのあたりの内容についても説明するもののなかなかちょうどよい教科書がなく困っておりましたが*1,トピック・論点ごとに整理されたものとしてとても有用だと思います。前も紹介しましたが(こちらなど),最近の地方自治の教科書は多様になってきて非常に良い傾向だなあと感じるところです。

地方財政審議会の会長である小西砂千夫先生から,『地方財政学』をいただきました。ありがとうございます。初めの方を中心に,関心のある章についてまずは拝読いたしましたが,地方財政の制度と実体が非常に詳細かつ丁寧に描かれていて,今後自分が授業で地方財政関係のところを話すときにはまず確認させて頂かなくてはと感じるものでした。そして,ご用意されるのが大変だったのではないかと想像しますが,最後の演習問題とその解答についても,本書を基盤とした説明として,学生向けの大学の試験のみならず研究者としても非常に有用なものだと感じます。地方財政の特定の論点についてちゃんと説明するのって難しいわけですが,一貫して説明されているのは非常に参考になります。

京都大学の曽我謙悟先生から『行政学[新版]』をいただきました。ありがとうございます。もともと非常に理論的・体系的な教科書として有名ですが*2,その新版ということで,前回出版されたところからさまざまな研究を取り入れた「学界における研究成果のカタログ」を充実させているとともに,図表のアップデート・更新がなされています。初版から図が非常に多いんですが,それをできるものは全部更新するっていうのはすごい作業で本当に大変だったのではないかと…。

個人的にも,2013年に出てからずっと授業で使っている教科書ではあるのですが,この10年で自分が強調するポイントがだいぶ変わってきた気がします。初めのうちは第一部(政治と行政)と第二部(行政組織)を中心に講義をしていたのですが,最近はほとんど第四部(ガバナンスと行政)だけで行政学の授業してる感じがします。まあコロナ禍で授業再編成をして,行政学地方自治(こちらは第三部(マルチレベルの行政))に変えた,というのもあるわけですが。自分自身の志向として,Public administrationからPublic managementの方に移っていったということに加えて,行政のマネジメントをどう考えるかということの研究も少しずつ増えているのではないかと。それを受けて,代表的には野田先生の教科書とかそうじゃないかと思いますが,地方自治の教科書を中心に「管理」ではなく「マネジメント」という観点から接近しようというものも増えているのかもしれません。

*1:まあ連携については自分で書いた『テキストブック地方自治』の章があるのですが!!

*2:ご本人は「読む教科書」とおっしゃってました。