地方自治の法と行財政/現代日本のNPO政治

北海学園大学の木寺元先生に『地方自治の法と行財政』をいただきました。法律・政治・行政・財政など他分野の研究者が集まって執筆した教科書です。これまでの地方自治の教科書と言えば、地方自治法だけ、地方行政だけ、あるいは地方財政だけ、といったものがほとんどだったと思いますが、それらの垣根を超えて様々な分野の内容を網羅したコンパクトな教科書というのは実はなかったと思います。地方自治について概観するときに、まず手に取ることができる一冊になるのではないでしょうか。

地方自治の法と行財政

地方自治の法と行財政

関西大学の坂本治也先生から、『現代日本のNPO政治』を頂きました。「現代市民社会叢書」の他のシリーズと同様に、本当に膨大なデータから、日本のNPOという非常に取り出しにくい対象を丁寧に分析されています。多重・多層なデータを整理するだけでも本当にご苦労があったと思いますし、さらにそれを加工して変数間の分析まで行くのは大変なことで、この仕事がいかに大変なものかの想像もつきません。
全部を丁寧に読めたわけではないですが、終章でNPO政治が国政よりもローカルな政治過程において焦点になる、という含意を出されたのは、地方政治を研究している人間にとっても興味深いところ。これまでは、なかなかデータを取ることもできずに分析がおろそかになってきたところがありますが、これからはこのデータがあるわけで、地方政治の分析においてNPOがどのような位置を占めているかについて言及していく必要性も強まったかと思います。何より、データができてくると言い訳もできなくなるわけで…。
現代日本のNPO政治―市民社会の新局面 (現代市民社会叢書)

現代日本のNPO政治―市民社会の新局面 (現代市民社会叢書)

もうひとつ、宣伝ですが共著本『地方政治と教育行財政改革』が出ることになりました。僕は2章を担当していますが、これは地方政治と教育委員会とについて論じただいぶ前の学会報告をかなり再構成して作ったものです。本当はもう少し事例分析のようなものを付け加えて、教育委員会の独立性を議論することをしたかったのですが、研究の方向性(というかなりゆき)からなかなかその時間が割けない中で、日本教行政学会の企画本の一章として載せたいというお申し出をいただき、まさに渡りに船ということで修正して出版することができました。趣旨としては、「中立」を旨とすることになっている教育委員会も、政治の影響から自由になることはできないわけで、保革対立が強い時期であればその時期に特有の、また、1990年代以降保革対立が弱まって無党派の長が出てくる時代になればその影響を受けたかたちの教育委員会の構成になるということを、教育委員の交代に関するデータから論じるものになっています。大阪でも橋下徹氏の教育委員会に対する長のコントロールをかけるべきだという議論がありますし、それなりに現代的な課題についての議論ができているかと思いますので、ご関心の向きにはご笑覧いただければ幸いです。
地方政治と教育行財政改革―転換期の変容をどう見るか

地方政治と教育行財政改革―転換期の変容をどう見るか