現代官僚制の解剖

宣伝ですが,有斐閣から出版された北村亘編『現代官僚制の解剖ー意識調査から見た省庁再編20年後の行政』に,「なぜデジタル化は進まないか-公務員の意識に注目して」という章を寄稿しました。本書は,村松岐夫先生が実施されてきた官僚意識調査の衣鉢を継ぎ,大阪大学の北村亘先生を中心に20年ぶりに実施した官僚意識調査のデータを利用した研究を出版したものです。予算制約などもあり,対象になっているのは課長級以上が中心で,サンプルサイズも制約されているので,公務員の全体像を明らかにしたとまではなかなか言えませんが,現状で可能な範囲で直接(幹部)公務員の方々の意識に迫ろうとした研究であると思います。もちろん当初はもう少し広い範囲に実施することを考えていたのですがまあいろいろありまして…(という経緯は「はじめに」と10章にちょっと書いてます)。

私自身は最近細々と研究しているデジタル化について,組織文化との関係について考えてみたというものです。「デジタル化は大事だよね,だけど政府はできてないよね」とみんな言うわけです。でも情報通信技術の導入という観点から言えば,電話や電報,FAX,インターネット,ウェブ会議システムなんかも政府はそれなりに導入してきたわけです。でもできてない,と言われるときに「業務を機械で代替する」ということについての組織文化的な抵抗があるのではないか,ということを考えてみました。サーベイの分析結果から言えば,効率より大事なものがある,とか,外部の理解が大事だ,と考えていたりすることと,機械による代替には積極的じゃない感じが相関しているんじゃないか,というような感じになりました。こういう組織文化は測定するのが難しいし,なかなかはっきりしたことは言えませんが,ひとつの議論としてご笑覧いただけると嬉しいです。