統治機構改革は教育をどう変えたか

3月30日に『統治機構改革は教育をどう変えたか』という本をミネルヴァ書房から出版いたしました。私は徳久恭子・本多正人両先生と一緒に編者ということになっております。編著というのは『世の中を知る、考える、変えていく』に続いて二冊目ということになるのですが、研究プロジェクトのとりまとめという意味での編者は初めての経験になります。出版社とのやり取りや、全体の整合性を取るような編集を少しやらせていただきました。

研究プロジェクトと書きましたように、本書は科学研究費補助金・基盤研究B「公共政策におけるリスケーリング(政府間関係・行政単位の再編)に関する研究」の成果です。2020年度からスタートして、延長があって2024年度が最終年度となり、一応期間内に成果を刊行することができました。内容はタイトル通りですが、1990年代の統治機構改革(選挙制度改革/行政改革地方分権改革など)が教育政策にどのような影響を与えたかを検証するもので、「リスケーリング」という言葉が入っているように、実証のところでは地方分権改革の影響を特に検討する感じになりました。

政治学系の人が前半の統治機構と教育についての割と大きな話をして、後半は教育学系の人がサーベイに基づいて現状を分析するという感じです。私はなぜか後半側ですが、担当している5章では、都道府県・市町村の教育委員会に対するサーベイなどから、どのような自治体が分権的な教育政策(取り上げたのは教員の独自採用や人事の権限移譲です)を志向するかを分析したものです。分権が進んで自治体が色々独自にやりたいとなると(そういう事例研究は多いわけですが)、資源があるところが特に反応すると考えられるところ、独自採用については確かにそういう傾向はみられるものの、権限移譲についてはそこまで積極的というわけではなく、文脈に応じて選択的に対応しようとしているのではないか、ということを論じています。

なお、都道府県教育委員会・市区町村教育委員会へのサーベイについての結果はこちらにまとめられています。

德久, 恭子, 本多, 正人, 川上, 泰彦, 2023, 教育行政における政府間の相互補完性:都道府県教育委員会基礎調査にみる標準化のしくみ: 立命館大学法学会, pp. 550–607

德久, 恭子, 本多, 正人, 川上, 泰彦, 2024, 地方教育行政システムの再評価(1) : 分権改革以降の地方教育行政管理の実像: 立命館大学法学会, pp. 1–40.

德久, 恭子, 本多, 正人, 川上, 泰彦, 2024, 地方教育行政システムの再評価(2・完) : 分権改革以降の地方教育行政管理の実像: 立命館大学法学会, pp. 420–452.