原則廃止へ…?

読売新聞の記事から。(via Yahoo!

農政局「原則廃止」、整備局「大幅縮小」…首相表明へ
11月6日3時3分配信 読売新聞
麻生首相は5日、政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と6日に会い、国の出先機関農林水産省地方農政局を原則廃止し、国土交通省地方整備局は大幅に機能縮小した上で、地方自治体に業務を移す方針を表明する意向を固めた。
首相は所信表明演説地方分権改革について、「霞が関の抵抗があるかもしれない。私が決断する」と述べており、政治主導の改革姿勢を示すことで、政権浮揚につなげる狙いがある。
地方農政局(全国7局、2007年7月時の職員数約1万5000人)や地方整備局(同8局、同約2万1000人)などは、都道府県の業務と異なり、地方議会などの監視がきかないまま、巨額の予算で公共事業などを行っていることへの疑問が出ている。農政局は、汚染された工業用「事故米」の問題で、対応のずさんさが明らかになり、整備局は、道路特定財源からの無駄遣いが明るみに出た経緯があり、首相は優先的に見直しに取り組むべきだと判断した。
ただ、多数の国家公務員を地方公務員に移したり、役割分担見直しで国の補助金を廃止したりするなど、制度設計は複雑で、地方に移譲できる事務量も未知数だ。関係省庁や族議員の抵抗が予想され、実現可能性を疑問視する声もある。

ホントなんですかねぇ…。その前に農業土木部門を整備局と統合するとかやってみるべきことがたくさんあるような気がするのですが。現在の出先機関は,いわゆる第一次分権改革でもともと機関委任事務であったものも含めて「国の直接執行事務」として整理しているわけですが,出先機関がなくなるということはこの「国の直接執行事務」はどうなるんでしょうか…。ひとつは別の出先機関を作るというのはあるわけですが,この記事を読む限りそれはなさそうで。本来国がやるべき仕事を地方自治体が自治体の仕事としてやる事務(=法定受託事務)は例外という位置づけなはずですが,これを大幅に増やすということ?既に日本は単一国家としては他国に例を見ないほどに自治体が仕事をしているわけで(連邦国家と比べても仕事が多い),これ以上自治体の仕事が増えるのはどうなのか,と。もともと今回の分権委では,はじめの方でさらなる権限移譲を進めるよりも,既に自治体が持っている権限への縛りを緩めて裁量を増やすという方向性で議論するんだ,という話だったと思うのですが…。まあこういう政治の場で,決定されていない「当初の話」をしても詮無いことなのでしょうし,またヒアリングを聞いていると,農政局への印象がどんどん悪くなっていってしまうのもわかる気はしますが(苦笑)。しかしこれまで出先機関が担っていたものというのが,第一次分権改革のときに限定されたはずの「国の直接執行事務」で,現在義務付け・枠付けの緩和でかなり苦労している自治事務よりも義務付けが厳しい,ということを考えると,これを自治体に権限移譲しても自由度が増えるわけでもないし,また誰が責任を取るんだという問題も不明確になってしまうのではないかと思われます。出先機関が非効率,というかきちんと機能していない,という問題があるならば,それはまさに「国の責任」で解決するべき問題だと思うわけですが。
しかしこの記事はなんだか不思議な記事。出たのは6日未明,ということですが,「6日に丹羽委員長と会って意向を表明することを固めた」わけであって,少なくとも現時点ではこの意思表示をしていない,ってことなんですかね。まあ今日の動向を見てみないと細かいところはよくわからん,ということなのでしょうか。

追記

新聞によって随分揺れてるんですけど,どうなんですかね。

麻生首相、地方農政局と整備局の廃止含め検討 分権委に指示
麻生太郎首相は6日、首相官邸で政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と会談し、農林水産省出先機関である地方農政局の業務について「廃止を含めた地方への大幅移譲」を検討するよう指示した。分権委は12月にも公表する2次勧告に向け、国の出先機関の廃止や業務移譲案を検討中。都道府県との「二重行政」が指摘されている地方農政局などの扱いが焦点となっていた。
首相と丹羽氏は国土交通省の地方整備局に関しても廃止を含む業務の大幅移譲の方向を確認した。首相は主要出先機関の縮小方針を打ち出すことで、次期衆院選に向けて行政スリム化や地方分権への積極姿勢を印象づける狙い。ただ自民党の一部議員や関係省庁の反発は必至で、分権委の2次勧告に廃止や業務移譲の方針が盛り込まれたとしても実現までの調整は難航しそうだ。(10:59)

日経新聞によると原則廃止というわけではなくて「廃止を含めた地方への大幅移譲」とのこと。一方,未明に記事を書いた読売新聞は,さらにヒートアップしてます。

農政局・整備局は原則廃止、麻生首相が表明
麻生首相は6日午前、首相官邸で政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と会談し、国の出先機関である農林水産省地方農政局国土交通省地方整備局を原則廃止する方針を表明した。
事務・権限、職員、財源を大幅に地方自治体に移譲する考えで、分権委は12月8日にもこうした内容を盛り込んだ第2次勧告を首相に提出する。政府は2009年秋の臨時国会に関連法案を提出する方針だ。
首相は会談で、「国民、国会の目の届かない出先機関を、目の届くようにしてほしい」と述べた。政府と分権委は今後、国家公務員から地方公務員への移管を円滑に進めるための「人材移行委員会」や国から地方に税財源を移譲するための「財源移行委員会」の設置を検討する。
分権委は第2次勧告で、国と地方自治体の二重行政や税金の無駄遣いを解消するため、両局の事務・権限を大幅に都道府県に移譲するよう勧告する。両局に残す必要がある事務は別の省庁の出先機関と統合するなどし、省単位に存在する出先機関はなくす意向だ。
全国に7局ある農政局は、地方農政事務所など約280の下部機関を持ち、約1万5000人(2007年7月時点)の職員を擁する。整備局は8局で、河川国道事務所など約1000の下部機関、約2万1000人の職員を抱えている。
(2008年11月6日11時36分 読売新聞)

朝の記事では農政局が原則廃止だったのに,昼の記事では農政局・整備局が原則廃止,ということで。よくわからないんですが,会談の議事録とかあるんですかねぇ…いや,ないか。日経と読売でわりと幅がある話にんっているほか,読売では「人材移行委員会」とか「財源移行委員会」の設置を検討する,と。これまでのこの手の審議会であれば,本委員会とは別にワーキンググループとか小委員会ってのをぶら下げることが多かったわけですが,いまのところそういうのは小早川委員を中心とした義務付け・枠付け検討の行政法学者によるWGのみ。この二つはWGにするのだろうか,それとも別の委員会にするということなのかなぁ。しかし道路の1兆円の話といい,政権が変わって微妙に盛り上がって参りました(いや世間的にはどうかしりませんがorz)。単に僕がうがった人間だからかもしれませんが,現状で示されているスケジュールでは21年度末までに新分権一括法案を国会に提出するということで,少なくとも21年内には勧告が終わって地方分権改革推進計画を作る必要がある,と。増田前大臣の前倒し発言を踏まえると,推進計画を作るのは10月ごろなんでしょうが,それをもうちょい早めて,「郵政選挙」ならぬ「分権選挙」があったりして,なんて。まあ郵政のように白黒はっきりしたテーマじゃないんでそんなこともないでしょうが。

さらに追記

いい加減長いですが。結局日経も原則廃止ということで。

農政・整備局の廃止勧告へ 分権委が出先機関改革で
麻生太郎首相は6日、政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)と会談し、国の出先機関である地方農政局と地方整備局を廃止する方向で見直すよう指示した。分権委はこれを受け両機関の業務を地方に移し、組織の廃止を求める勧告を12月にまとめる方針。4万人近い職員の扱いや9兆円規模の財源の移譲など、実現への課題は多いものの、中央省庁の抵抗が強かった出先機関の改革が進む可能性が出てきた。
出先機関は中央省庁の業務を各地方で実施する機関。なかでも国土交通省の地方整備局は8兆円、農林水産省地方農政局は1兆円の予算を握る巨大な存在だ。職員数はそれぞれ2万2000人、1万5000人。農政局は食の安全に関連する業務や農業統計、整備局は道路や河川の維持・管理事業を手掛けているが、都道府県でも同様の仕事があり、二重行政の無駄が指摘されている。(07:00)

勧告を12月にまとめるってまぢですか。まあ人の移行や財源については読売の記事にあったとおり別に委員会なんかを作って議論する,ということなんでしょうけど。しかし自治体にとって規模の経済も範囲の経済もないような仕事が法定受託事務として激増するということは避けるべきではないかと。それは別に自治体の裁量が増えるわけでもないし,効率化に資するわけでもないので,そういうのを分権って言ってみても仕方ないのではないかと思うのですが…。「都道府県でも同様の仕事があり」とあるのと同じように都道府県や市町村がやってない仕事もたくさんあるわけで,もしこれが既定方針として動かないのであれば,せめて両者を切り分けて,後者については出先機関を統合してみるなり,国の責任で効率化するべきだと思ったりするところです。