第53回会合(2008/7/17)

今回の会合は,農水省へのヒアリング(地方農政局関係)と松田専門委員からの出先機関整理関係についてのペーパーの説明。農政局についてはいちおう第35回会合でもヒアリングはしているものの,規模の大きい出先機関だからという理由でもう一回ということだそうです。まあ二回目ということもあり,今回は農政局の仕事の説明ではなくて,農政局における予算の使い方や人員・庁舎の管理の在り方についての議論に集中していました。
委員の側としては,年度末にDVDレコーダを買ったり,年度初めにいっぺんにたくさん予算を使ってたりするというような農水省の予算の使い方に対してツッコミを入れるものの,農水省の側としては,ちゃんとチェックされているという答えのみ。また,委員からは庁舎が分立していることがムダじゃないかという問いが出るのですが,それに対しては合同庁舎に入りたくても空きがないから仕方がない,とのことで,「ムダ」と思えるようなものを個別に衝いていくタイプの質疑はどうもあまりうまく行かない感じ。
それでは,ということか知りませんが,農政局の事務と都道府県の事務の重複があるのか,農政局でしかできない仕事は何か,というやや抽象的な質問へ。農政局の側としては,生産調整関係の事務をはじめ,今農政局でやっているのは全てそうだというゼロ回答です。生産調整そのものの是非についてはイロイロとあるのだと思いますが,農水省の言い分としては,全国的な観点から適地適作の考え方のもとに,コメ以外の作物を作れるところでは生産調整を通じてコメ以外のものも作ってもらうようにしないといけない,ということ。都道府県に任せると,そういう全国的な観点からの生産調整ができずに,コメがつくられやすくなり,結果として食料自給率が上がらない,という趣旨の議論。まあわかるような気がしないでもないわけですが,じゃあなんで農家が他の作物ではなくコメをつくりたがるのか,というところには目を向けなくていいのかなぁ,と思いながら。あとは統計関係の事務についても,統計が生産調整の決定と分かちがたいので,都道府県に任せると,自分たちに都合のよいようにデータが作られてしまう課も知れないというお話を。確かに都道府県が農家と結託してデータの信頼性を損ねてしまう可能性があるというのはひとつの重要な論点だと思いますが,委員の側にも「都道府県を信頼できないのか」というだけではなく,どういう制度設計にしたらそういうインセンティブを抑えることができるかについての議論があってもよかったのではないかと思います。
ヒアリングが一通り終わると,出先機関の見直しに関する中間報告の構成案について。これは資料の通りですが,まあ書き方が難しいのはとりあえず「組織の見直しの方向」のところなのでしょう。あんまり決め打ち的なことをしてどこかの機関の廃止が一人歩きするのもちょっとなぁ,というところはありますし。また,整理の仕方も難しそう。西尾代理から補足がありましたが,出先機関の整理縮小・都道府県への権限移譲に絡めて難しいのは補助金に関する事務権限の取り扱いで,以下のような整理が可能だろうと言う見解が示されます。

  • 交付申請の受理から(出先機関ではなく)本府省が処理する
  • 補助金交付に関する事務そのものを廃止
    • 補助金交付を止めて,財源を地方へ移譲することを考えず,お金の問題も出ない
    • 補助金交付事業を廃止するが,従来充ててきた財源は地方へ移譲
  • 以前として地方出先機関が関与し続ける

このような補助金に関する事務権限については,具体的に一件一件の補助事業について中間報告で議論するのは極めて困難で,第二次勧告までに結論を得るべきだ,と言うような考え方になっているようです。前の地方分権改革推進会議では,補助事業を具体的に廃止するということで,義務教育国庫補助負担金の議論から入り,結局ここでうまく妥結できずに議論がこじれた,という前例があるわけで,その轍を踏まないように慎重に入るというのは重要だと思われます。しかも今回は出先機関の整理という観点からやろうとしているので,前のときよりは委員間の合意が取りやすいと思いますが…ただ,公共事業関係についてどうするのか,など大きな課題があるのだろうと思われます。
あと,委員からの意見としては,道州制の議論とは別であることを強調するべきだ,という声が。都道府県・基礎自治体への権限移譲というもの無しに道州制の議論をしても無駄で,最終的に道州制に向かうには,権限移譲を受けた都道府県等の広域連携という文脈から入るべきだ,というような議論かと。まあ今までの議論を聞いていたらその通りだろうと思うわけですが,やや独走気味に区割りの話を始めようとしているビジョン懇(区割りの専門委も設置へ 道州制ビジョン懇談会)をどう落ち着かせて,どういう風に関係を結んでいくかというのは今後の課題だと思われます。
他には出先機関に関連する公益法人を整理すべきだ,あるいはそれとの関連で出先機関に対するチェックを働かせるメカニズムを構築すべきだ,という議論が支配的でした。公益法人の整理は非常に重要だと思われるところですが,分権という観点から,出先機関整理との関係でどこまで踏み込むことができるのか,ということがひとつの課題でしょう。規制改革会議のように,かなり長い年限を掛けて,計画のモニタリングをしながら進めていく,というような手法も必要になるのかもしれませんが…。その辺はまた委員会の位置づけ自体の議論になるような気もします。