最近いただいた本

2月はバタバタしてしまうのに、1月くらいには少し空いているように見えて、その結果予定を入れてしまい死にそうになるというのは毎年繰り返されているような気がしますが、この現象はなんていうだろう。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」か。
全然更新できなかったので、アリバイ的に最近いただいた本を。
東海大学の出雲明子先生から、『公務員制度改革と政治主導: 戦後日本の政治任用制』を頂きました。これはすごくいい研究だと思います。2014年最後にして最大、というか。公務員制度・改革に関心がある方は必読だと思います(高いけど)。個人的にも非常に勉強になりました。こういう本を読むと、歴史を知らなくてはいけないという言葉がよくわかります。この本の感想をちゃんと書こうと思ってたのに時間が取れないからしばらく更新できませんでした。また別に書きます。

公務員制度改革と政治主導: 戦後日本の政治任用制

公務員制度改革と政治主導: 戦後日本の政治任用制

立命館大学の佐藤満先生からは『厚生労働省の政策過程』を頂いておりました。厚生労働省(厚生省)の1990年代の重要政策として確定拠出型年金(401k)、臓器移植法介護保険法という三つの政策を取り上げ、基本的にその政策過程を丁寧に追われています。最後の分析としては、それぞれの政治の流れと政策の流れ(キングドン)の違いを生み出したものとして、イシューセイリアンス(注目度)とイシューネットワークの一体性(要するにテーマを扱う政治家・官僚のグループの外延が比較的明確であること)を取り上げて仮説的な議論が行われています。本書の感じでは、三つの政策の相違点について議論されているように思いますが、これらの政策の共通点としては、それまで市場的に扱われていなかったもの(年金保険、臓器、介護サービス)を準市場的に扱うというテーマにかかわっているものだとも考えられるような気がします。実は個人的に最近気になっているテーマでもあるので、そういう観点からも少し読んでみたいというところです。
厚生労働省の政策過程分析

厚生労働省の政策過程分析

東京大学の村上祐介先生から、編者としてまとめられた『教育委員会改革5つのポイント―「地方教育行政法」のどこが変わったのか』を頂いておりました。2015年4月から教育委員会制度が60年ぶりに変わるということで、それに備えた緊急出版という感じでしょうか。今年は政治学の授業で教育委員会制度改革をディスカッションのテーマとして扱ったのですが、その種本として利用すればよかった…とやや後悔しております。
教育委員会改革5つのポイント―「地方教育行政法」のどこが変わったのか

教育委員会改革5つのポイント―「地方教育行政法」のどこが変わったのか

著者の皆様から『統治の条件』を頂きました。以前に東洋経済から出版された『民主党の組織と政策』の続編とも呼べる著作で、民主党政権のときの人事・代表選挙や意思決定手続き、選挙に有権者の評価、とかなり幅広に分析をされています。民主党政権の研究は、関係者のヒアリングなどぼちぼちと出版されていますが、今のところおそらく最も包括的で学術的な研究と言えるように思います。「バラバラ」と言われる民主党が、どのような意味で「バラバラ」だったのかということが示されているとも思いますし、その中でいかにまとまろうとしたか、選挙を戦おうとしたか、ということも理解できる労作でしょう。
統治の条件-民主党に見る政権運営と党内統治

統治の条件-民主党に見る政権運営と党内統治

民主党の組織と政策

民主党の組織と政策

新潟県立大学の浅羽祐樹先生から『韓国化する日本 日本化する韓国』を頂きました。Twitterちょっとした感想を書きましたが、比較政治学的に韓国の現状を分析したうえで、国際関係における日韓両国や日韓関係についての分析・評価と浅羽先生としての「プレゼン」がされていると思います。ご本人も書かれているように、「プレゼン」にはいろいろリスクもあるわけですが、思い切って現状についてのコメントをされることは非常に重要だし、最近の政治学に求められているところでもあるように思います。もちろん、誤解に基づいて好き勝手言ったらまずいわけですが、そこは政治制度の最近の研究をある程度踏まえたうえで、言えるところを言う、というようにされているように感じたところです。
韓国化する日本、日本化する韓国

韓国化する日本、日本化する韓国

御厨貴先生から『安倍政権は本当に強いのか』を頂きました。現在進行中の事象を分析するのは非常に難しいですが、そこは現実にも深くコミットされている御厨先生の筆致で、いろいろ説得的に読めました。個人的に最も興味深かったのは、菅官房長官についての分析で、典型的な「党人派」というようなキャリアの方と考えられるにもかかわらず、幹事長ではなく官房長官の方に適性があるという議論がされています。伝統的な「党人派」は人情の機微に通じてそういう特性を発揮しながら党をコントロールする、というところがあるように思ってましたが、そういう感じの菅氏にして幹事長より官房長官に適性があるとすれば、自民党という組織が一般的な組織とは違うような組織になってきたという遠因もあるような気がします(まだ官僚組織の方が「一般的」といいますか…)。一度下野して従来のキャッチオールとはやや違う感じになった自民党という政党がこれからどうなるんだろう、と考えるきっかけになる本のように思います。最後に、首都大学東京の谷口功一先生から『ショッピングモールの法哲学』を頂きました。『RATIO』に書かれていた論文をはじめとして、谷口先生がこれまでに書かれてきた論文をもとにまとめられたものです。谷口先生の教養・博識に非常に驚くとともに、本の作りにいろいろ工夫が施されているのは面白いなあと思うところです。しかし、第二部の論文がもともと修士論文だったってのは大変ですw 指導教員だったらどうしようと思っちゃいました。
中心的なテーマは、公共性と共同性の関係、あるいは共同性に還元できない公共性をどう考えるか、ということになるのだと思います。このテーマは、実のところ私にとっても大学院に入るときに扱いたいと考えていたテーマでありまして、紹介されている議論をやや懐かしく思いながら興味深く読ませてもらいました(なお私の方は、やや迂回的にこのテーマを扱ってきたつもりなのですが、その辺は『地方政府と民主主義』のあとがきをご笑覧いただければ)。個人的に最も面白かったのは第二章で、特にここで議論されている「再分配」の議論は自分の研究にも深く関係しそうだと思うところです。まだうまく言語化できないのですが、再分配を単なる給付としてとらえるのではなくて、個人のエンパワーメントと関連付けて議論する試みなのかな、と。共同体の成員が再分配を要求する権利を持つ、というよりも、再分配を受けることによって公共性を身につけるというか、自由の前提となる自己抑制が可能になるというか、そういうような捉え方ができるのかもしれないという仮説をもったところです(全体をうまく説明できないので、これだけだとなんだかよくわからないのですが、個人的な備忘のためとして)。
ショッピングモールの法哲学: 市場、共同体、そして徳

ショッピングモールの法哲学: 市場、共同体、そして徳