沢木耕太郎のデビュー直後のルポ(っていうのかな?)の新装版が出ていたので,何となく購入。単行本としてははじめてのものだったらしい。何より驚くのは,25歳のときに,周辺取材も含めてこれだけの人たちにインタビューして,毎月一本いわば簡易ライフヒストリーを書いていた,ということ。この直後に『テロルの決算』『危機の宰相』とか書いていくわけで,20代の仕事としてこんなことをやっているのは率直にすごいと思う。ていうか,1970年代当時には,20代の人間がこの手の政治に関する文章を,いわゆる総合雑誌に寄稿してメジャーになっていく,という経路があったのだろうか,あるいは沢木耕太郎に特殊なことなのかな。そのあたり時代の雰囲気はよくわからないが,最近で似たような仕事をしている人はあんまり思いつかない。もちろん20代の論客というのはいるわけだが,社会学くずして空中戦してるようなイメージだし(って僕が読んでるものが偏ってるだけかもしれませんが)。
「論客」というのとは違うが,沢木耕太郎が『危機の宰相』以降も,プロスポーツ選手や芸術家と同じ平面で政治家を語るような,こういう「政治ノンフィクション」のようなものを書き続けていたらなぁ,と思うところがある。政治家の人物を描くものって,他の多くはやっぱり御用絵師が肖像画を描くみたいな感じになっていて,このくらいの距離をとって,かつアカデミックな制約に囚われないで書いてるものって少ないし。新聞記者がまとめるものはなんだかんだ言っても政策や制度と絡めて書くところがあるので,それはそれでまた違うわけで。
内容は,こちらが今の年齢になって読むと,まあ面白いと思うところとそうでもないと思うところは割とはっきりしてたような感じ。あとがきで本人が勉強しながら書いたとしているところは,残念ながらあんまり面白くなかったように感じた。他方,あんまり全体像を追わずに,何かよくわからないけど対象者との接点やコメントから,分からないなりにその人を描こうとした感じのところが面白かったかなぁ,と。変な印象かもしれないけど,畑正憲(ムツゴロウ)氏のところが個人的には抜群に面白かったからそう思うということなのかもしれない。あとは小澤征爾氏についても似たようなところがあるかな。
こういうのって僕が絡むところで何かの教材に使えたりするのかなぁ…まあジャーナリズム論とかそういうのくらいになるような気はするけど。
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