コロナと社会科学

もう8月も終わり…というのは信じられないというか受け入れられないというかって感じですが、いつの間にか時間が過ぎてしまうのは困ったものです。ツイッターとかぼんやり見てたりするのが悪いんでしょうけど…。

最近は細々と「月記」を維持するだめに月末にいただいた本の紹介をするだけになってますが、少し前にいただいた本のご紹介をしておきます。まず、東京大学のケネス・マッケルウェイン先生から『パンデミックと社会科学』をいただいておりました。東京大学社会科学研究所でやっていた共同研究の成果です。前半は社研でやってた様々な調査の分析に基づくものです。何といっても動きが速いですよねえ2020年3月という本当に初期の時点からオンライン調査をしていて、その後の4回にわたるパネル調査、それから2022年3月の調査、と機動的に行われた複数の調査を分析しています。それ以外にも、社研で継続的にやってるパネル調査を使ってパンデミックの効果を見るというのも強みでしょう。もちろん、サーベイ以外の分析も充実しています(主に第三部)。

個人的にも、社研と比べると遅いですが2022年7月から2年ほど調査をしていたので、非常に参考になる先行研究として勉強させてもらってます。特に3章(政府要請の効果)、5章(信頼される専門家)、8章(メンタルヘルス)といったあたりは直接的な先行研究ということになります。頻繁に状況が変わる中で、サーベイという手法でどのくらい現実の理解に近づけるのか、というのは同じような研究をしている人たちの変わらない課題のように思いますが、似たような研究がこうして出版されるのは、とても参考になりますし、励みにもなりますね。我々の方も論文だけではなくこういうまとめの書籍出版を考えないといけないわけですが…。

もうひとつ、岩崎正洋先生から『コロナ化した世界』をいただきました。」ありがとうございます。こちらは日本大学での共同研究で、2023年に出版された『命か経済か』に続くものということになるそうです。短い期間で連続して成果を公表されるのは本当に生産的なことだと思います。こちらの本では、コロナウイルスのまん延という経験を経て、経済社会の何が変わったのか、何が変わらなかったのか、もし変わったとすればどのように変わったのか、という総括を試みるものということで、日本に関してのいくつかの事例分析と、ブラジル・トルコ・スウェーデンアメリカ(の小規模自治体)・イギリスのコロナ対応についての検討が行われています。コロナ対応についての国際比較はいろいろと出版されていますが、日本語で書かれているものはまだあまりないような感じで、重要な貢献ということになると思います。