いただいた本(教科書など)

年明けから降ってくる仕事を延々とこなしていたら、頂いた本の紹介をする時間もなかなか取れないうちに5月も終わりになってしまいました。もうすぐ一年半分終わるってうそでしょ…。というわけでもうずいぶん前になるのですが、津田塾大学の西川賢先生から『社会科学研究者のためのデジタル研究ツール活用術』をいただいております。ありがとうございました。オビに「研究以外のことで忙しすぎる研究者へ。」と書いてあって、これはなかなか共感されそうなコピーだと…何というか、まあバタバタとしているので、体系的に研究に役立つようなツールを理解することを難しく感じることがあります。そこで西川先生のように、新しいツールに詳しく、ガジェットも良くご存じの人がどういうツールを使ってマネジメントをしているか、ということをまとめて広く共有していただけると本当に助かります…。僕などは、GrammerlyとDeepLを使うくらいで、ChatGPTもあまり使いこなすこともできておらず、どんなものなのかと外から撫でてるだけなんですが、どういうことになってるかの全貌(の一端)を見せていただけるだけでもありがたい限りです。

BNPパリバの河野龍太郎さんから『グローバルインフレーションの深層』をいただきました。前著の『成長の臨界』から続けて本を出されるというのはすごいです。今回の著作では、前著では扱われなかった、「円」について取り扱うという、まさにエコノミストの面目躍如というところです。冒頭で出てくる、均衡実質為替レート(ドル円)のジャンプ、というのは非常に印象的で、コロナを挟んで急激な実質円安が進んだという構造変化が示されています。確定的なことはわからないわけですが、その原因としてはウクライナ戦争勃発後に日本の地政学上の脆弱性が改めて認識されたことに加えて、家計のホームバイアスが緩んでいるのではないか、ということが指摘されています。特に後者については重要な論点で、「私たちの国がなお、先進国であるのなら、胸を張って「国際分散投資」が進展していると言えるであろう。しかし、もし新興国への転落が意識され始めているのなら、それはキャピタルフライトである。」(38頁)というのは厳しい警句のように思いました。過去30年の物価安定から、世界的にインフレが起きている状況への転換と、その構造をどう考えるかということで歴史をさかのぼっていく2章以降も興味深い議論だと思います。

編者の岡山裕先生から、『アメリカの政治 第2版』をいただきました。ありがとうございます。こちらは初版から第3章(選挙と政策決定過程)が新しくなったということです。政治の構造についての説明が行われた後、アメリカ政治のイシューとして、文化的争点から安全保障まで、10の争点が扱われています。アメリカ政治の分極化が進む中で、今年は選挙イヤーということで、様々な論点をめぐってかなり激しい対立が生まれることが考えられるわけですが、その背景を勉強するのに役立つ教科書のように思います。

白鳥潤一郎先生から『新興アジアの政治と経済』をいただきました。ありがとうございます。こちら放送大学のテキストですが、フィリピン政治専門の高木先生と中国経済専門の伊藤先生がかなりの部分共著で書かれていて、国ごとではなくイシューごとに「新興アジア」をとらえるという野心的な構成になっています。たとえば移民の8章では送り出し国のフィリピンと受け入れ国のシンガポール・台湾の社会とその変化に触れながら、アジアの中の移民が論じられる、という構成はあまり見たことがないような。ざっと読んだだけなんですが(すみません)、他の章も新しい切り口で「新興アジア」に迫ると感じられるものでした。やっぱ放送大学で野心的なものをやってみるっていうのは面白いなあ、と思います(余り野心的でもないものを書いている身としては自戒を込めて…)。

この半年くらいでめちゃ色々本をいただいていて、しかし年明けからえらくバタバタとし続けてきた結果、なかなかご紹介もできないままに来てしまったのですが、またボチボチご紹介できれば…。